プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な問題となるなか、プラスチック製品に市場を奪われた日本の伝統工芸が巻き返しを図ろうとしている。環境省のサイトでも、プラスチック問題の解決に貢献する活動として紹介されている。
デパートなどの店頭で、最先端の衣服をまとって並ぶマネキン。戦前の日本のマネキンは石膏や和紙製だったが、戦後にプラスチック製が中心になった。
海洋研究開発機構が2017年に公開した海洋ごみのデータベースでは、日本海溝の水深約6300メートルの海底で撮影されたマネキンの頭部の映像が確認できる。深刻化するごみ問題の象徴として注目を浴びた。
マネキンの製造を60年間手がけている大手「モード工芸」。埼玉県富士見市の工場に、真っ白いプラスチック製のマネキンと並んで、クリーム色のマネキンが置かれていた。溶かした再生紙を型に入れ、水分を抜いた後に天日干しし、和紙で包んでつくられたものだ。大里祥生常務は「紙と米のりを使った昔ながらのダルマの製法で作ったマネキンです」と話す。
同社はプラスチック製に加えて、群馬県の高崎だるまの老舗と一緒にダルマ製法のマネキンも細々と作り続けてきた。だが、年2、3体しか注文がなかった。
世界でプラスチックごみ問題が注目されてきたのを機に、大里さんが環境省のプラスチック問題の解決アイデアを共有するサイト「プラスチック・スマート」にダルマ製法のマネキンを投稿したところ、サイトで紹介され、注目されるようになった。