釧路市阿寒湖温泉地区でアイヌ民族文化の伝統を受け継ぐ工芸品作家らが製作した雑貨や衣料品が10月中旬、セレクトショップ大手ビームス(東京・渋谷)の首都圏の主力店舗で販売開始する。品目はアイヌ民族伝統の文様の刺しゅうを取り入れたコートのほか、バッグや装飾品。ビームスの発信力を活用し、アイヌ工芸品の知名度アップと販売拡大につなげる。
12日からビームスの主力店舗「ビームスジャパン」(東京・新宿)で販売する。ビームスが国内の工芸品などとコラボを進める「フェニカ」の業態で扱う。アイヌ工芸品の商品企画や販売に関連しビームスと、阿寒観光協会まちづくり推進機構(北海道釧路市)が約2年かけて進めてきた。
「アイヌ クラフツ」として販売を始める商品群は約50品目。阿寒湖温泉地区や北海道旭川市在住の6人のアイヌ工芸作家が製作した。
「籠バッグ」はアイヌ民族の言葉で「チタラペ」と呼ぶアイヌ民族が伝統の儀式で使う敷物のござを素材にしたかばんで価格は税別5万~5万8千円。コート「オホーツクライナーコート」は中央部にアイヌ文様の刺しゅうを施したもので、価格は税別8万8千円。これまでは地元の土産物店での販売が中心だった。
このほか、アイヌ文様をかたどった装飾品や木彫りの熊やサケなどを取りそろえた。市価に比べてやや割高だが、釧路市産業振興部阿寒観光振興課の天内武範課長補佐は「アイヌ民族の伝統文化の数々がデザインに表れている」と指摘する。商品は一品ごとに手作りのため、在庫がなくなり次第、受注生産で対応する。
今回の事業は2017年10月、ビームス「フェニカ」の商品企画や仕入れを担うディレクター2人が阿寒湖温泉を訪ねたことをきっかけに始まった。資金面では釧路信用金庫(北海道釧路市)が日本財団の「わがまち基金」による助成金制度を活用してサポート。20年3月末まで3年間で1千万円が助成されている。