輪島塗の技法を駆使したSDGs(持続可能な開発目標)のバッジを、輪島市内の漆器店が9日までに作製した。SDGsの趣旨に賛同し、今年から始めた「国産うるしプロジェクト」の第1弾で、店側は日本の漆文化の良さを発信し、若手職人や国産漆、漆の応援団を育てるプロジェクトを進めていく。
バッジを作製したのは輪島市河井町の岡垣漆器店。国連が掲げるSDGsの理念に共鳴して始めたプロジェクトを広く知ってもらうため、岡垣祐吾社長(40)が企画した。
直径約2センチで、輪島塗の上塗りの工程でかつて使われていた「イボ手板」と呼ばれる道具の突起部分を切り取り、土台部分として再利用した。蒔絵(まきえ)師の松田敏明さん(37)、真希さん(31)夫婦が漆と顔料を組み合わせ、輪島塗の蒔絵技法を使って鮮やかな17色を施した。
同漆器店は漆の9割以上を中国産に依存する現状の改善に向け、国産漆を育てるプロジェクトに着手した。地元産漆の再生を図る団体と連携し、若手職人が手掛けた企画商品の売り上げの一部をウルシの植樹に活用する。職人の育成にも取り組み、活動を通じて漆文化を支える応援団の輪を広げていく。
岡垣社長によると、天然素材で作られる輪島塗は傷や汚れが修理でき、長く使えるため環境に優しい。地域のものづくり文化の継承など、SDGsの考え方に合致する。
岡垣社長はバッジについて「SDGsを通して多くの方に輪島塗の良さを知ってもらえればうれしい」と話し、将来は業界や行政と連携した輪島塗の振興にも期待を寄せている。