夫の転勤で愛媛県から昨夏秋田県仙北市に移住した同市角館町の問屋業今村香織さん(39)=茨城県出身=が、県内の職人を紹介するフリーペーパー「いま、秋田村から」(B5判、8ページ)を発行している。500部刷ったが、引き合いも多く好評。今村さんは「秋田は手仕事の歴史があり、全体的に質が高くて層が厚い。まるで宝探しのような感覚でわくわくしている」と話す。
昨年12月に発刊した第1号では、同市田沢湖生保内地区で活動するくるみ籠職人の藤沢柳市さんを紹介。今年4月に出した第2号は、秋田市八橋地区の土人形「八橋人形」を取り上げ、存続に取り組む八橋人形伝承の会の梅津秀会長にスポットを当てた。
今村さんは、愛媛と本県の職人が手仕事で作った品を首都圏などに卸す「Now village(ナウビレッジ)」を経営。「手仕事には地域の文化や風土、人の営みが含まれる。秋田の暮らしの素晴らしさを伝えたい」と刊行の趣旨を説明する。
記事では、取材で感じた思いを交え、職人のこだわりや人柄、製作意欲の源をつづる。文面からは、職人だけでなく、その土地や暮らしに向けられた今村さんの温かなまなざしが伝わる。
職人に引かれたきっかけは、学芸員を務めた埼玉県川口市の美術館で、職人の展覧会を企画したこと。鋳物職人への密着取材などを通し、「人生を懸けて仕事に向き合う生き様に感動した」という。
劇団わらび座(仙北市)勤務の夫晋介さん(39)が2014年に愛媛県に転勤した後も、趣味で職人を訪ね歩いた。その中で職人の一人に「あんたも、なんかやったらええわ」と言われて一念発起。「東京に品物を売りたい」という職人の願いをかなえようと、翌15年に自らの姓の「今(ナウ)」「村(ビレッジ)」を連ねた社名で起業した。
商品PRも兼ねたフリーペーパーは、約4年住んだ愛媛県でも2号出したが、1冊36ページに多くの職人を載せ、カタログに近い編集だった。一方、「秋田村」では1冊で1人の職人をじっくり書き込む形で、4カ月に1冊のペースで発行。2歳と11カ月の2人の娘の母でもある今村さんは「子育て中だし、秋田ではゆっくり自分のペースで作りたい」と話す。
今後の抱負について今村さんは「秋田の手仕事はかわいいものが多い印象。時間は限られるが地道に続け、職人を通して秋田の良さを発信したい」と話した。
フリーペーパーは同市角館町の八柳や安藤醸造など県内外の15カ所に置いている。メール(info@nowvillages.com)で問い合わせれば、送付も可能。
ホームページアドレスはhttp://www.nowvillages.com