日本の手仕事 伝統の技を受け継ぐ「ものづくり」

海外を視野に入れる若手職人たち

日本の伝統に根ざした「ものづくり」の技術が海外へ発信されている。外国の見本市への出展をはじめ、若手の職人たちが海外で販路の開拓に努めるなど、技術大国のなかで受け継がれる「手仕事」が海の向こうで熱い視線を浴びている。

今年1月25~28日、イタリアのミラノ市郊外の国際展示場「ロー・フィエラミラノ」で開かれたライフスタイルの見本市「HOMI」(ホーミ)。リビング・住まいのパビリオンの一角で、日本のじょうろのデモンストレーションが行われていた。

「『竿』を長くしているのは水圧をコントロールして安定した散水をするためです」。来場者に説明していたのは、日本で唯一の盆栽用銅製じょうろメーカーで、東京の下町、墨田区に工房を構える「根岸産業」3代目の根岸洋一さん。小さな鉢植えの中で植物をはぐくむ日本の盆栽は「BONSAI」として海外にも愛好家がいるが、それらの人々にとっては水やりの世話は大事なひととき。使う道具も最適なものをそろえたい。

創業者の祖父はもとは神社仏閣の屋根職人だった。終戦間際にトタンなどで生活用品を製造する会社を興し、園芸用じょうろをつくり始めた。中学時代から家業を手伝っていた根岸さんは大学卒業後、システムエンジニアになったが、兼業でじょうろづくりの腕を磨き、2013年に父が他界したのを機に専業となった。

すべての工程は手作業で、製作できるのは1日4個。「銅の溶接の際に使うコテは高温にするため電気ではなくコークスで熱している。銅は耐久性が高い。水に溶けた銅イオンによって水質を保全し、コケなどの生育を助ける効果がある」と話す。ミラノでの展示には、イタリアで日本の「BONSAI」を広めた園芸家、クレスピ・ルイージさんの家族が応援に駆け付けた。

ミラノのジュエリー・デザイナーで「BONSAIが好き」と言うアレックス・ルッカさんは銅製のじょうろを手にしながら「機能美に優れ、使えば使うほど味が出ると思う」と感心した様子だ。

「このじょうろの特性について、人づてではなく自分で直接、説明できることにやりがいを感じた」と根岸さんは言う。すでにイタリア、ドイツ、ロシアなどのバイヤーから注文があった。

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