地域文化の発信にこだわったホテルの開業相次ぐ

 平成30年の訪日外国人観光客数は3000万人を突破し、今後も堅調に推移する見通しだ。これに伴い都内や地方都市では、外国人観光客を意識したホテルの開発が相次いでいる。キーワードは地域文化の発信だ。

 3月中旬、日本三名園のひとつである兼六園(金沢市)の徒歩圏に、グランビスタ ホテル&リゾートが「ホテルインターゲート金沢」(客室数・166)を開業した。デザインを監修したのは三井デザインテック。外国人観光客の間で高い人気を誇る古都・金沢らしさを感じさせるデザインを、積極的に取り入れたのが売り物だ。

 例えば現地の日常生活に浸透している茶の湯文化を具現化。茶筅(ちゃせん)に見立てたコーヒーカウンターをロビーの中心に設置した。

 館内の至る所には金沢城の石垣に見られる亀甲形のデザインを施した。また、臙脂と藍、黄土、草、古代紫を基調とする「加賀五彩」を客室の中やロビーの随所に採用。デザインを手がけた同社の三樹旦子(みき・あさこ)さんは「最高の朝を届けるというホテルのコンセプトにふさわしい色彩」と話す。

外国人観光客に評価

 一方で蒔絵(まきえ)体験や加賀八幡起き上がりなど、石川ならではの伝統工芸を学べるワークショップを随時開催していく。黒田英紀支配人は「今後、和菓子づくりにも取り組んでいけたらと思う」と意欲を示す。

 九州最大の繁華街である福岡市天神の中心部にあり平成元年に開業した「ソラリア西鉄ホテル福岡」は、全面改装された。このホテルのデザインも三井デザインテックが手がけた。コンセプトのひとつが和モダン。洋室でありながら和を感覚的に感じてもらえるような空間づくりに力を入れた。

 その代表的な事例が客室や廊下、エレベーターホールに設置された棚「TENJIN SHELF」。棚や客室には、伊万里焼や大川組子、柳川手まり、九州各地の写真アートなど、地域の名産品を飾った。

 同ホテルを運営する西鉄ホテルズの金子新社長は「客室やエレベーター前は、こだわった分だけ完成に時間を要したが、いいものができたと自負している」と話す。文化に対するこだわりが評価され、外国人観光客の利用頻度も高まっているという。

日本橋の文化を表現

 三井不動産ホテルマネジメントも地域コミュニティーや文化の発信に力を入れる。昨年9月に開業した「三井ガーデンホテル日本橋プレミア」(東京都中央区)では、1階のエントランス部に舟をモチーフにしたベンチにもなるアートを設置。東西南北を指す舟が五街道の起点だった日本橋を表現する。客室にはインテリアの一部に、江戸切り子模様や日本橋川を表すアートを配した。

 同社などが着工を開始した「(仮称)京都浄教寺ホテル計画」では、寺院とホテルが一体となった建物を新築。令和2年秋の開業を予定しており、特別な宿泊体験を提供する計画だ。

 野村不動産などが昨年に開業した「NOHGA HOTEL UENO」(東京都台東区)は「地域との深いつながりから生まれる素敵(すてき)なコンセプト」をコンセプトに掲げ、地域の職人やデザイナーと連携した。これによって、ホテルで使用される日本酒グラスやタンブラー、ティッシュボックス、靴べら、ハンガー、メニューボードなどを製作。客室内でも東京のものづくりを体験できるようにした。

 また、レストラン・ラウンジなどを活用し、地域の人々と連携したイベントやワークショップなども定期的に開催。同様のコンセプトのホテルを東京・秋葉原や京都で計画している。

 外国人観光客の間では、商品やサービスから得られる「体験(コト)」を重視する「コト消費」の人気が高まっているだけに、地域文化にこだわるホテルの開発競争が一段と活発化しそうだ。

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