佐賀)佐賀錦作家の井手さん、歴史などまとめた本を出版

本を出版した井手美弥子さん=2019年11月7日、佐賀市城内1丁目

佐賀錦の保存と技術の継承を目指すNPO法人「佐賀錦紗綾(さや)の会」理事長で、佐賀錦作家の井手美弥子さん(71)=佐賀市=が、その歴史などをまとめた本「佐賀錦の形2」(A4判、60ページ)を出版した。「もともと佐賀錦は文献などの資料が少ない」と話す中での労作だ。

佐賀錦は、金箔(きんぱく)などを貼った細い和紙で経紙(たてがみ)と呼ばれる縦糸に、絹糸を横糸として竹べらを使って織る。

鮮やかな佐賀錦。同じ文様を組んでも、糸の色を変えると、違うもののように見える=2019年11月7日、佐賀市城内1丁目

「貴重な伝統工芸を後世に伝えていくため、研究家として資料を整理して文章にした」と語る井手さん。本によると、江戸後期に始まったとされる佐賀錦の発祥は諸説あり、証明する文献などは見つかっていないという。

鹿島藩第9代藩主に嫁いだ小城藩主鍋島直愈(なおます)の娘篤子、後の「柏岡の方」(1798~1877)が病に伏せたとき、天井の網代(あじろ)組みの面白さに気づき、模様を日用品にと側近に漏らした。そこで紙縒(こより)で印籠(いんろう)などを作った――。これが鹿島発祥説だ。

井手さんは実際に天井を見上げ、見つかっている資料の内容を元に同じものを繰り返し試作したといい、「鹿島説は有力」と推測している。

本では、こうした佐賀錦の説明や歴史のほか、「鹿島の鍋島家」「大隈重信と佐賀錦」「東京で育まれた昭和の佐賀錦」「海を渡った佐賀錦」などの章からなる。米国人の佐賀錦作家もいることから、海外の人にも広く知ってもらおうと英訳も付けた。

「佐賀錦の形2」

自身や母、佐賀錦教室の生徒たちの作品を掲載した前作「佐賀錦の形」に続く出版で、ポーラ伝統文化振興財団の助成を受けた。税込み2500円。問い合わせは井手さん(080-2770-2066)へ。

佐賀錦紗綾の会主催で、鹿島市民図書館の高橋研一学芸員による基調講演「佐賀錦の祖柏岡と鹿島最後の藩主鍋島直彬」が、24日午後1時から佐賀市天神3丁目のアバンセで開かれる。来年2月23日には鹿島市生涯学習センター・エイブルでも開かれる予定。

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