会津若松市の会津大短期大学部は、同市の伝統工芸・会津慶山焼の陶工と連携し、陶器製造現場への3Dデジタル技術の導入に取り組んでいる。3Dプリンターで製作した模型で作品の仕上がりを事前に確認でき、陶器を成形する型も簡単に作れるため、実用化されれば、完成度が高い多様な陶器の安定生産につながる。
同大学部の沈(シム)得正(テークチン)講師が産業情報学科の授業として、会津慶山焼「やま陶」(同市)と協力しながら、1年生6人と実施している。学生らは3Dソフトを使ってコンピューター上で陶器をデザイン。3Dプリンターで作ったプラスチック製の模型で、実際の大きさや形を確認して修正を重ねる。納得のいく形に仕上げた後、3Dデータを読み込ませた加工機で石こうを削って型を自動製作。シート状にした粘土を型にかぶせ、成形する。
石こうの型を使った陶器製造技術は益子焼(栃木県)などで活用されているが、沈講師によると型を製作するには高い技術と時間が必要。一方、経験がなくても3Dデジタル技術を応用すれば、複雑な形の型でも短時間で作ることができるという。
やま陶の曲山輝一社長は「顧客が求める器の形が多様化している。実用化されれば、無限に形を起こすことができる」と期待する。授業は昨年10月から始まり、学生らは現在、仕上げ作業に入っているが、1年生の江川千音さんは「型のへこみに粘土をぴったりと合わせたり、粘土の厚みを均一にしたりするのが難しい」と話した。
生徒らが手掛けた陶器は3月末までに完成予定。沈講師は成果を検証しながら、実用化へ検討を進める。「3Dデジタル技術と伝統技法を融合させ、新たな形を生み出せるようにしていきたい」と語った。