博多人形の伝統工芸士、梶原正二さん(68)が粘土で作ったハマグリの貝殻の内側に、源氏物語全54帖の場面を一つ一つ描いた「貝絵」を完成させた。約300体のひな人形とともに福岡市早良区小笠木の工房で3月中旬まで展示している。
梶原さんは12年前、博多人形師グループ「白彫会」が源氏物語をテーマに開いた新作展に出品。貴族たちの恋愛や人生を描いた物語をモチーフとして追究するようになった。市民向け講座で物語について学び、登場人物の人形づくりと並行して貝絵を描いてきた。
かつて20帖ほど作ったことはあるが、今年は工房で開くひな人形作品展が20回の節目だったため、長年の夢だった54帖すべての制作に挑んだ。昨年7月からそれぞれの帖で取り上げる場面の絵を練り始めた。図柄が決まると、粘土の貝殻(幅10センチ、奥行き7・5センチ)の形を整え、乾燥させてから墨で下絵を描き、鉄筆で丹念に彫り込んで立体感を出す作業をした。焼成後、漆を塗って金箔(きんぱく)を貼り、顔料で華やかに色づけして仕上げた。
貝絵とひな人形の作品展を17日まで開いたところ、「平安時代の雅な世界に浸れる」と好評だったため、展示期間を延長した。梶原さんは「博多人形の技で、繊細に仕上げた絵を味わってください」と話す。見学希望者は事前連絡を。工房=092(804)3224。