夢は染め物テーマパーク、水野染工場の脱「伝統工芸」

「引染」という技法を駆使(旭川市の水野染工場)

水野染工場(北海道旭川市)は旗やノボリに色鮮やかな絵柄や文字を染め付ける「印染(しるしぞめ)」の老舗だ。上司を評価する「360度」の人事制度を導入したり、若手、女性を積極的に登用したりしてしがらみの多い伝統工芸からの脱却を図ってきた。当面の目標は染め物のテーマパーク建設だ。

主力は祭りのはんてん・法被や大漁旗、手拭いなど。漁船の進水祝いや初節句などで人気の大漁旗なら旭川市郊外にある工場で、綿の生地に一点ずつ手作業で染色する「引染」(ひきぞめ)という伝統技法を駆使して若い職人が染めていく。

絵を描くのがもともと好きだったという入社4年目の吉田麻乃さん(26、製造部)は「光の加減をグラデーションで表現するのが最も苦労しますね」と語る。一方で仲間と協力しながら染め上げる今の仕事は楽しいといい、「やりがいを感じます」と目を輝かせた。

2020年で創業113年を迎えた。大雪山の豊富な伏流水があり、染色、洗濯を繰り返す染め物に不可欠な水には事欠かない。企業としての転換点は1997年、4代目の水野弘敏社長が当時は黎明(れいめい)期だったインターネット販売を始めたあたりだった。

2004年と14年には東京・浅草に手拭い、風呂敷などの「染の安坊」2店を出店し、受注生産が当たり前の業界で既製品の販売に乗り出した。染めの体験工房も展開する。売上高はここ10年で約5%増と着実に伸びており、19年3月期は3億2000万円だった。

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「経験と勘」から脱却、ネット販売も貢献

大量に製造する手拭いや細かい柄には大きな枠に下絵を張り、ヘラで染色する捺染(なっせん)という制作手法もある。これら伝統技法にしても数千種類の調合パターンをマニュアル化するとともに、客の発注内容をバーコードで管理して効率化する手法が光る。

水野社長は「この人にしかできない『職人』ならもはや必要ない」と語る。目指すは「経験と勘」で仕事をしてきた昔ながらの染色業界からの脱却だ。東京など道外での販売が今では大半を占め、ネット通販もその一角を担っている。

社員35人の平均年齢は38歳で、女性の比率は6割に達する。長らく「3K」職場の代表格とされた染め物業界では出色ともいえる高い数字だ。優秀な女性がけん引役となり「負けていられるか」と男性も奮起するという好循環が生まれる。

360度評価の人事制度には公平な人事考課を求めるうちにたどり着いた。社長を含め「あなたが素晴らしいと思う人は?」と年2回全社員にアンケートして点数化。ランクづけした上で発表し、賞与に反映させる。現場での仕事ぶりと管理職としてのマネジメント能力について判定し、奮起を促す。勉強会の回数は年間100回を数える。

「伝統を守るためには挑戦しかない」と水野社長は言い切る。3年後をメドに原料となる藍の収穫から工房まで体験できるテーマパークを旭川空港の周辺に建設すべく、構想を練る毎日だ。

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