薩摩錫器はひと味違う!職人技が光る、銀色の渋い光沢が美しい

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指先1,000分の1ミリ-匠の技

1655年、現在の鹿児島市下福元町で錫鉱脈が発見された。薩摩藩の保護により、錫の生産は藩の主要な産業に成長。明治以降、錫器は広く庶民の暮らしに溶け込むようになった。

人体に害がなく熱伝導に優れる性質に加え、割れない、さびないと縁起物としても重宝されてきた。
錫山鉱山は1986年閉山。現在は海外から輸入した錫を使っている。

鹿児島市の錫山鉱山で採掘された錫鉱石

焼酎蒸留器の蛇管

岩切美巧堂は1915年創業。焼酎工場で使われる蛇管(パイプ)に始まり、錫器に移行した。

蛇管は抗菌効果が高く、酒がまろやかになるとされ、今でも使われている。

1997年、県伝統的工芸品に指定。現在は創業者一族を中心に10人ほどの職人が、分業体制で錫細工の技を継ぐ。
融点が232度と低く、軟らかい錫は、溶かしやすく、加工しやすい。

溶かした錫を鋳型に流し込む鋳造

錫器作りは鍋で溶かした原料を鋳型に流し込んで成型し、ろくろにかけてかんなで表面を削って仕上げる。

鋳物の外側、内側をかんなで削り、形を整えるろくろ加工

驚くのがその精巧さ。例えば、吸い付くようにぴたりと密閉する茶壺のふたを削り出すには「指先の感触で1,000分の1mm単位で調整している」と専務の岩切洋一さん。

「削り出しで6割は形が決まる。切子で言えばカット。習得に20年はかかる」と経験と勘がものを言う。

表面を磨き上げる「白地」、腐食させてざらついた肌にする「梨地」、漆による着色「いぶし加工」など多彩な表現が可能なのも錫の面白さ。
「時代に合った作品づくりをしていきたい」と、新しいデザインも貪欲に取り入れる。

色鮮やかな絵付けを施した茶筒

いぶし銀の渋い光沢、ずっしりとした重厚感、それでいてどこか温かい。職人の確かな技が薩摩錫器の世界を広げる。

「薩摩錫器の魅力を多くの人に伝える場所に」と岩切美巧堂創業100年記念に建設した薩摩錫器工芸館。
作品約500点が並ぶ展示・販売スペースや錫皿の製作体験コーナー(要予約)がある。

製作体験コーナーなど薩摩錫器の魅力を感じることができる

岩切美巧堂(薩摩錫器工芸館)

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