職人技の見学体験施設に 旧今井染物屋4月29日オープン

新潟県上越市大町5の市指定文化財「旧今井染物屋」が耐震改修工事を終え、2021年4月29日にオープンする。かつて高田の一大産業だったバテンレースの常設工房のほか、さまざまな手仕事作家向けの工房も設け、職人技の見学や制作体験ができる文化発信拠点として生まれ変わる。

雁木通りに面した部屋「ミセ」はバテンレースの常設工房に

旧今井染物屋は、江戸時代末期に建てられた市内に現存する中で最古であり最大級の町家。雁木の上にせり出した2階部分がある「造り込み式雁木」など、高田を代表する町家建築として2019年に市文化財に指定された。

市は地方創生の取り組みの一環として、16年度から高田地区の歴史的建造物を生かしたにぎわい創出を目指している。旧今井染物屋がある大町5は、明治時代には高田の人口の3分の1が従事していたバテンレース産業など繊維業の中心地だったことから、伝統文化の手仕事を継承、発信する施設として活用するため、20年8月から耐震改修工事が進められていた。

外装の塗り直しも実施

工事では、建築当時の趣が残る部屋などはそのままに、台所など比較的新しかった部屋を作業場などとして作り変えたほか、エアコンや多目的トイレの設置、耐震性を上げる補強材投入などを実施した。

雁木通りに面した部屋「ミセ」は「吉田バテンレース」(東本町2)の常設工房としてミシンなどが置かれ、職人の作業を見学できる。吹き抜けが特徴の「チャノマ」や水仕事ができる土間の「流し場」など5室は、手仕事作家による制作実演や作品の展示販売、制作体験教室などができる工房として利用者を募る。各部屋の占用利用は無料で、市によると、現時点で草木染めや革製品、竹細工、家具、イラストなどの作家が利用を予定している。

明るい白色照明にエアコンも完備した作業場

25日に開かれた内覧会でチャノマを見学する地元住民

市文化振興課の串橋祥子課長は「バテンレースのデザインから制作までを行う企業も(吉田バテンレースの)1社だけになり、大事な産業がなくならないためにも文化を継承、発信したい。ここに来れば毎日色々なものがあり、何かをやってみたいと思える施設になれば」と話した。

大町5町内会の松倉康雄会長(72)は改修後の施設について「すばらしい。有沢製作所が大町5でバテンレースを作っていたので、久しぶりにまた懐かしい音が聞こえるな」と期待を寄せていた。

29日は午前11時開館。その後は午前10時から午後5時まで。月曜休館。入館無料だが、制作体験は材料費がかかる。

問い合わせは同課 025-526-6903。占用利用の申請書は同課のホームページからダウンロードできる。

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