漆文化も、我が子も愛するからこそ両立 職人・2児の母「金継ぎ」キット販売好評

「子育て中も漆の文化を多くの人に伝えたい」と開発した金継ぎセットを手にする清水さん

壊れた陶磁器を漆で接着し、接ぎ目を金銀の粉で装飾して再生させる技法「金継ぎ」を広く伝えている清水愛さん(40)。2児の母として「自宅にいながらできる仕事を」と、初心者でも金継ぎを体験できるキットを開発し、通信販売している。事業内容や自身の働き方を発表した昨年末の「京都女性起業家賞」で特別賞を受けた。

京都府亀岡市西つつじケ丘出身で、漆との出会いは2002年。大学卒業後、旅行で訪れた香川県の美術館で、漆を施した飾り箱に一目ぼれした。仕事の傍ら教室に通い始め、2年後には修復工房に弟子入りし、心を決めた。「漆を通して社会とつながり、漆を仕事にする」

15年、漆の文化を発信するブランド「urujyu」を設立。漆器の制作と金継ぎ教室の運営に奔走する日々だった。販路拡大のため米国など海外に出向くこともあり、「独身の頃は、寝ている時間以外ほぼ仕事に費やしていた」と振り返る。

「仕事一辺倒」だった生活をがらりと変えたのは、長男(2)の出産。子どもの急な病気などで、納期のある作品制作や展示会への参加がかなわなくなった。だが、「自分で作れなくても伝えることはできる」と、篠町の自宅などで開く金継ぎ教室に専念した。

18年には長女(9カ月)を妊娠。時間の制約がさらに厳しくなる中、知恵を絞った。金継ぎの魅力をもっと多くの人に知ってもらおうと、教室で使用していたセットをインターネットで販売。漆や色粉など使い切りサイズの材料、へらや筆といった道具がそろい、「初心者でも簡単に始められる」と子育て世代の女性にも好評だ。現在は国内外に発送するセットの制作を中心に、1日あたり2時間、週3日のペースで仕事をしている。

府主催の「京都女性起業家賞」では、各地から集まった女性たちの熱い思いにも触れた。「働き方はさまざまでも『子育ても、やりたいこともあきらめない』という気持ちは一緒。女性って欲張りなのかな」。胸ですやすやと眠る長女を優しく見つめ、そう語った。

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