特徴・産地
奥会津編み組細工とは?
奥会津編み組細工(おくあいづあみくみざいく)は、福島県大沼郡三島町周辺で作られる木工品です。奥会津の山間部は積雪が多く、冬場は農作業ができないため、積雪期の手仕事として、古くから先人により受け継がれています。この地方で育つ植物「ヒロロ」「山ブドウ」「マタタビ」を素材とした編み組細工で、素材ごとに「ヒロロ細工」「山ブドウ細工」「マタタビ細工」に分類されます。
奥会津編み組細工の特徴は、地域の自然素材を生かし、素朴でありながらも独特の繊細さを持つ手編みの良さです。
ヒロロ細工では、手さげ籠、抱え籠、肩かけ籠などが作られ、細かい編み目とレース編みに似た仕上がりです。また、山ブドウ細工は強靭な素材であるため、丈夫な籠類や菓子器などが作られます。
マタタビ細工は、水切りと手触りの良さから、主に炊事用具が作られています。
奥会津編み組細工は、自然と上手くつき合い、必要な民具を自ら生み出す「ものづくり」の文化が生き続ける伝統工芸品です。
歴史
三島町にある荒屋敷遺跡(あらやしきいせき)では、編み組された籠などの断片が発見されているため、奥会津編み組細工の技法は縄文時代には存在していたと考えられていました。また、「会津農書(あいづのうしょ)」や「東遊雑記(とうゆうざっき)」などの古文書にも、編み組細工に関する記述が確認できます。従って、奥会津編み組細工は古来からこの地域で日常的に作られていました。
今日まで受け継がれている奥会津編み組細工は、1965年(昭和40年)代から高齢化の影響で、編み組細工の従事者が減少していました。このままでは編み組細工の技術や技法が失われてしまうことを危惧した三島町は、地域産業としての定着を目的に生活工芸運動に乗り出します。生活工芸運動は年々地域に浸透し、現在では、100人以上の従事者が、奥会津編み組細工の技術や技法を守り続けています。
制作工程
1.採取
奥会津編み組細工にはマタタビ細工、ヒロロ細工、山ブドウ細工の3種類あります。ここではマタタビ細工の製作工程をご紹介します。
マタタビ細工の場合、採取の時期は11月以降です。積雪が始まるまでに肉厚のマタタビを採取します。
2.皮剥ぎ
マタタビの皮を剥ぎます。
3.裂き割り
剥いだ皮を縦に4~5本に割いていきます。
4.芯取り
ナイフなどを使用して柔らかい部分を剃り落とし、ヒゴを作ります。採取から芯取りまでは、素材が乾燥しないうちに一気に行わなければなりません。
5.底編み
幅が揃った皮を使用して底面を作ります。使用する技法は、二本飛網代編と四つ目編です。
6.横編み
底面の四辺から出た部分で、側面を編み上げます。おなな技法は、笊編(ざるあみ)や二本飛網代編などです。
7.縁留め
予定の高さまで編み上げたら、縁を巻き上げて縁をとめます。
8.縁の補強
クマゴツルなどで縁の部分を固定します。
9.乾燥
寒晒(かんざらし)あるいは雪晒(ゆきざらし)をします。これは、でき上がった笊などを、風通しと日当たりのいい軒下などで乾燥させることです。寒く冷たい風に晒すと強度が増し、雪の反射で漂白されます。