特徴・産地
仙台箪笥とは?
仙台箪笥(せんだいたんす)は、宮城県仙台市周辺で作られている箪笥です。
仙台箪笥の特徴は、豪華な飾り鉄による金具の装飾と、重厚感あふれる美しい漆塗りで、材料として栗や杉・欅(けやき)などが使われている点です。漆塗りには、「拭き漆塗り(ふきうるしぬり)」「木地呂(きじろ)漆塗り」「朱色漆塗り」の3種類があります。くぎを使用せず木材のみで箪笥を組み立てる「指物師(さしものし)」と、杢目(もくめ)の美しさを浮き上がらせる塗りを施す「漆塗り職人」、鉄板から繊細な文様を打ち出す「彫金(ちょうきん)手打金具職人」の3種の職人技が融合した工芸家具です。箪笥一棹(ひとさお)を製作するにあたり、平均100個から200個の飾り金具が作られ、なかでも、龍や唐獅子・牡丹といった代表的な絵柄は、伝統的な縁起物として用いられます。
歴史
仙台箪笥(せんだいたんす)のルーツは、戦国大名である伊達藩主・伊達政宗が青葉城を築城する際に、大工の棟梁によって作られた建具の一部だと言われています。
江戸時代末期には、仙台藩の武士たちが、内職仕事によって仙台箪笥を製作し、所有する大切な刀や羽織・裃(かみしも)に加え、貴重な文書類などを保管するために、日常の生活財として愛用していました。したがって、初期における仙台箪笥の大きさは、武士たちの使用目的に合わせて、幅4尺(約120cm)、高さ3尺(約90cm)が一般的とされ、「野郎型」と呼ばれていました。
明治時代末期から大正時代中期にかけて、仙台箪笥の種類や生産量が増え、全盛期を迎えました。当時は、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国にも輸出され、国内外の多くの人々に愛用されました。戦時中には一時的に生産停止となりましたが、戦後には熟練した各職人の手により製作が再開され、現在に至ります。
制作工程
1.原木の準備
原木を伐採し、丸太のまま3~4年保存します。
2.大割(おおわり)
丸太を大割(おおわり)し、4寸(約12cm)角に切り分けた後、風通しが良い保管場所に移し、15年ほど自然乾燥させます。
3.小割(こわり)
自然乾燥された角材を、厚みが8分(約24mm)になるように切り分け、屋内でさらに10年ほど自然乾燥させます。
4.木取(きどり)
仙台箪笥の表面には、美しい木目の欅(けやき)材を、箪笥の本体に使用する木材として杉材などを選びます。箪笥の内部には、杉や桐などを各用途によって仕分けし、各木材の切断箇所を決定します。
5.加工
仙台箪笥の表面にあつらえるために、製作する箪笥の大きさに合わせて、突き板や単板に加工します。
冷暖房環境に適応させるため、加工した突き板に桐材を貼り付けます。
6.組立
木取りした木材の表面を荒削りし、板接ぎ(いたつぎ)を行い、全体を組み立てます。
桐材や杉材を使って引き出しを製作し、箪笥の形に合わせて、大きさや幅を微調整していきます。
7.漆塗(うるしぬり)
天然の漆を採取し、用途に合わせた漆を用意します。
樹齢15~20年の漆の木から、樹液「生漆(きうるし)」を採取し、天日干しすることにより、約95%の水分を蒸発させて、「赤呂漆(あかろうるし)」を作ります。
「赤呂漆」に約3~5%の鉄分を加えて、「黒呂漆(くろろうるし)」に変化させます。また、「赤呂漆」に菜種油や松脂、水飴などを約30%加え、「朱合漆(しゅあいうるし)」を調合します。
さらに、「朱合漆」に鉄分を加えることで、「黒塗立漆(くろぬりたてうるし)」が完成します。
製作する箪笥の種類に合わせて、漆の種類を選び、前工程で完成している木地の表面の凹凸を磨いてならしたあと、漆を塗ります。
8.乾燥
漆を乾かすために、「ムロ」と呼ばれる高湿の保管場所に置きます。
乾いたら、漆塗と乾燥の工程を十数回程度繰り返して行います。
9.手打ち金具製作
職人が和紙に起こした様々な紋様を、一枚の鉄板に鏨(たがね)で手打することにより、絵柄を打ち出します。
打ち出す紋様によって、手作りの鏨(たがね)を何十種類も用い、手打ちの工程を繰り返していきます。
複雑な線の紋様は、一目ずつ打ち出し、膨らみがある部分は裏から打ち出します。
10.金具塗装
彫りおわった金具のすべてを、一つずつ丁寧にさび止めをほどこし、その上から塗装をおこないます。
金具の用途によって、銅や銀の鍍金(メッキ)のほか、いぶしの色付けを選択しながら塗り分けし、豪華な飾り金具を完成させます。
11.仕上げ
漆塗りをほどこした箪笥(たんす)に、飾り金具を取り付けて仕上げます。
飾り金具の取り付けは、さびることがない真鍮(しんちゅう)製の釘(くぎ)を用いて、慎重に打ち付けていきます。