特徴・産地
結城紬とは?
結城紬(ゆうきつむぎ)は、奈良時代から茨城県と栃木県にまたがる鬼怒川流域にて作られてきた絹織物です。
鎌倉時代には領主であった結城氏の名から結城紬と呼ばれるようになりました。現在では、高級織物として有名な結城紬ですが、元来養蚕業が盛んな地域での副業として生産されてきました。
真綿から一本一本、手で紡ぎだすことで作られる上質な糸から出来上がった結城紬の着物は、軽くて柔らかく、保温性に優れていることが特徴です。
真綿とは、蚕の繭を煮て柔らかく広げたもので、空気をたくさん含むため心地よく優しい素材です。この素材の良さを損なわない上質の糸を用いているので、経年変化による風合いが魅力となり、代々受け継がれていく最高峰の絹織物となります。
歴史
結城紬は、奈良時代、茨城県が常陸国と呼ばれていた頃に、朝貢として朝廷に上納されていたと言われています。当時は、結城紬ではなく「あしぎぬ」と呼ばれ、手で紡ぎだした太糸の絹織物(あしき絹)として知られていました。
鎌倉時代に結城紬と呼称されるようになってから全国的な知名度が高まりました。江戸時代に入ると、幕府の代官、伊奈備前守忠次(いなびぜんのかみただつぐ)が、結城紬の振興や改良に力を注ぎ、新たな染法が生まれました。その後、大正時代の末期に、「経緯絣(たてよこかすり)」の技術が生まれたことで、製品の品質は更に向上しました。
通常、縦方向か横方向どちらかを先に括って織ることが多いのですが、「経緯絣」では経糸も緯糸も括って織ります。何千本もの糸を合わせるので、職人の高い技術を要します。
戦後の技術改革で、絣(かすり)が精緻化されたため、細かい糸が用いられるようになり、更なる軽量化が進んでいます。
制作工程
1.真綿かけ(まわたかけ)
「真綿かけ」は、難しく技術を習得するには「綿かけ8年、糸つむぎ3年」と言われるほどです。まずは、繭を重層で約2時間煮ます。柔らかくなったら常温の湯の中で、5、6枚を丁寧に広げながら重ねていき、一枚の真綿とします。一反の結城紬を製作するには、真綿約50枚で1秤(はかり)としたとき、約7秤が必要です。
2.糸つむぎ(いとつむぎ)
「糸つむぎ」の工程では、真綿を広げていき、「つくし」という道具に巻き付けます。「つくし」とは、キビガラが付いた竹の筒を台に立てたもののことです。巻き付けたら、つむいでいきます。片手で糸を引き出し、もう一方の手で真綿をまとめていきます。長年修行した技術が必要な作業です。つむいだ糸は「おぼけ」という桶にまとめます。1秤分で1ボッチと呼び、1ボッチたまるまでには、7〜10日程度要します。
3.管まき(くだまき)
「おぼけ」にためた糸を管に巻いていく工程です。単純な作業ですが、糸車で巻いていくのに、早くもなく遅くもない適当な感覚が求められます。
4.綛(かせ)あげ
「綛あげ」の作業では、糸を扱いやすくするため、綛あげ器に巻いていきます。
5.機延べ(はたのべ)
「機延べ」は、長さを揃えていく作業です。延べ台に、糸を巻いて、一反から数反分の長さにします。
6.図案作成
方眼紙に図案を描き入れる作業では、時代とともにデザインが変化していきました。当初は簡単な模様が多かったのですが、大正時代以降、絵絣が増えていき、細工絣も新たに登場しました。
7.絣括り(かすりくくり)
「絣括り」の工程では、図案の通りになるよう染めない部分を作るために、絣糸を綿糸でしばります。「絣括り」のことを「絣くびり」とも呼びます。この工程によって、模様がきれいに入っていくのです。反物一幅に亀甲が少なくて80、多くて200個も入ります。縛りの箇所は、80亀甲で160となるので、200亀甲の場合には、大変な手間がかかります。「絣括り」だけで3カ月ほど必要です。
8.染色
「たたき染め」という染め方を結城紬では用います。名の通り、台に糸をたたきつけて染料をしみ込ませていく手法です。強すぎると染みすぎてしまうことがあるため注意が必要です。また、染めムラができないように集中して行わなければなりません。
9.糊つけ
「糊つけ」は、強度を増すためだけでなく、毛羽だちを少なくする効果もあります。糊が強すぎると織りづらくなるため、濃度は職人によって異なります。
10.筬通し(おさとおし)
この工程では、つむぎ糸を機織り機に載せるため、くし状の筬に、たて糸はヘラを使いながら差し込みます。
11.機巻き(はたまき)
たて糸を、緒巻に巻き、機織り機につけてよこ糸を織ります。
12.機織り
たて糸は横に張るため、腰当てに結び、よこ糸は筬(おさ)と杼(ひ)で打ち込んでいきます。「機織り」の作業でも長い期間を要し、1カ月から1年くらいかかることがあります。
13.縞屋(しまや)
完成した紬の検査が終わると、縞屋と言われる問屋で、取引を行います。
14.糊抜き
「糊抜き」は、仕立てる前に行う最後の作業です。湯通しをして、少しだけ糸の芯に残して、糊を抜けば完成です。