特徴・産地
小千谷縮とは?
小千谷縮(おぢやちぢみ)は、新潟県小千谷市周辺で作られている麻織物です。千数百年前から作られていたという越後上布を改良してできた伝統工芸品で、苧麻(ちょま)と言う麻の繊維で作られる織物です。
麻織物は乾燥に耐性がないため、作る過程で適当な湿気が欠かせません。新潟県の小千谷という地域は雪が多く、湿った空気が保たれていることで麻にとって最適な環境であり、その豪雪地帯の気候を生かし小千谷縮は発展をしてきました。
小千谷縮の特徴はシボと呼ばれるしわです。撚り(より)の強い糸を使うことで、撚りがほどけたときにシボが生まれます。もともと麻は水分を発散し、乾燥しやすい素材なのでべたつきにくい着物ができます。シボの要素が加わることによって、さらっとした夏に最適な着物を作り出すことが可能です。
高温多湿という日本の気候にも合っていたことで、日本人に愛される着物となりました。
歴史
日本の衣服には絹や藤布、麻布などがあり、越後上布は新潟県周辺で古くから庶民に利用されていました。越後上布の歴史は古く、奈良正倉院にも記述があるほどです。将軍や朝廷への献上品に利用されるように、当時より高級品として扱われていました。
小千谷縮が生まれたのは、1670年頃(寛文年中)です。明石藩士であった堀次郎将俊という人物が、明石縮を参考にして越後上布から生み出しました。その後魚沼地方全域に広がり、江戸時代に最盛期を迎え、年間で20万反を生産するという産業にまで発展しました。明治時代以降は近代技術が発展したため、手仕事で生産する職人が減少し、工業化の波に飲まれていきます。現在、この技術を守る活動があり、伝統を受け継ぎながら上質の麻織物が作られています。
制作工程
1.設計(絣図案制作・定規作り)
小千谷縮を作るには設計から始めるため、最初に絣図案を制作します。方眼紙に模様の場所を決めて図案を作り、次は細かい溝を彫っていき、図案を転写していきます。図案が一本一本分かれて見ることが可能です。糸のどのあたりに模様が入るかを知るために、図案を木羽定規と呼ぶ定規のうえに転写をします。定規1枚が緯糸の模様になり、繰り返し作業を行うことで全ての模様の定規ができます。
2.糸作り
小千谷縮の原料となる苧麻(ちょま)は、福島県にある昭和村という場所で育てられています。元々は越後で質の良い苧麻が採れましたが、上杉家の関係で会津地方へと移っていきました。糸作りを始めるためには、まず苧麻を刈り取り、水に浸して川をむきます。そこから繊維を取り出して乾燥させれば、青苧(あおそ)の出来上がりです。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を別々にひねっていき、緯糸にはシワを出すために強いひねりをかけます。
3.糸繰、手延べ、経延べ、緯延べ
経糸は制作予定図に合わせて、経延べ台で長さと数を調節します。緯糸はフクベという部分に巻いた糸から決まった本数を並べていき、綾を取って、のべ台に延べていきます。糸を整えたら、模様をつけていく工程です。小千谷の織物の特徴は、経糸は無地、緯糸は絣のみで緯総絣と呼ばれています。
4.墨付け、くびり
墨付けの工程では、木羽定規または紙テープに合わせて模様の位置に墨の印をつけていきます。印をつけてから、その部分を括ります。この作業で色がつかない部分ができるので緯糸に絣模様を施すことが可能です。
5.摺込み、染色
墨付けした後に行うのは、ヘラを用いて染料を擦込む作業です。繰り返しもみながら進めていきます。染めきったら100度ほどの蒸気の中に入れ、そうすると色が定着します。
6.織の準備、織
糸を染め上げたら、織機に取り付ける準備に入ります。図案を見ながら、経糸と緯糸を巻き上げていきます。まず、経糸を綜絖目(そうこうめ)に1本ずつ通していきます。緯糸は、ほぐして手繰枠(てくりわく)に巻き取ります。小起こし台にかけて、最後に管に巻けば準備は完了です。織の段階に入っていきます。織り込みは、大事な工程なので、少しずつ模様がでているかどうか確認が必要です。
7.仕上げ
最後の工程では、湯もみという縮特有の作業です。ぬるま湯のなかで手もみをしてしぼという凹凸を出していきます。このしぼが出ることが小千谷縮の特徴となるので、大事な工程です。また、足踏みをして糊などの汚れを落とすとともに、布をやわらかくしていく作業を行います。仕上げ後に、雪さらしにします。天気の良い日に雪にさらすと、天然の漂白効果があると言い、この作業でより美しい色と模様になります。検査をして完成です。