福井県越前市出身の建築士、鯖江市出身の映像作家の男性2人が、間伐材のヒノキと古里の越前和紙を使った組み立て式和室「庵(いおり)」を開発し、海外に販売する事業を進めている。日本文化に関心が深い個人から注文が入り始め、昨年からは成田空港のラウンジにも常設されている。2人は「日本の伝統工芸を海外に出していくきっかけにしていきたい」と話している。
組み立て式和室は一級建築士の北畑栄さん(64)=東京=が、約5年前に間伐材の利用を目的に設計した。北畑さんのおいで映像作家の吉田繁さん(48)=同=が、北畑さんの事務所に展示してあった和室のクオリティーの高さに注目。2015年に株式会社「モノサシ パブリック リレーションズ」を立ち上げ、海外向けのプロモーションや販売を展開している。
設計は和室がないマンションや日本文化を紹介するイベントなどでの利用を想定。「ライフスタイルに合わせて自由に動かせるように」(北畑さん)と、ベースはシンプルな構造で繰り返し解体、組み立てが出来るよう耐久性にも配慮。特別な技術や知識がなくても、大人3人が約2時間で完成させられるという。
一方、内装は日本の伝統工芸を取り入れて細部にまでこだわっている。障子や壁紙には越前市今立地区の越前和紙を採用。吉田さんは「1500年の歴史を誇る和紙と紹介すると感動する外国人は多い」と話す。建具や組子細工などは、金沢城の修復にも携わる金沢市のベテラン職人に依頼している。
基本サイズは4・5畳、3・25畳の2パターンだが、施工スペースに合わせて内装も含めてオーダーメードが可能。価格は120万円から。
タイやフランスの個人宅向けの受注があるほか、昨年7月に成田空港第1ターミナルにオープンした航空会社共用ラウンジ「NARITA PREMIER LOUNGE」にも納品。和室がない都心のマンション業界からの問い合わせも増えている。
同社のフェイスブックには、吉田さんが撮影した和紙、木工職人らの動画や写真が並ぶ。2人は「日本の伝統工芸が持続しないと、ビジネスは続けられない。ただ販売するだけでなく、背景にある歴史や文化もしっかりと伝えていきたい」と話している。
組み立て式和室のプロトタイプは9月中旬まで、越前市の卯立の工芸館で展示している。