正倉院「螺鈿紫檀五絃琵琶」の技術解明 滋賀の老舗が貢献

おもり(独楽)を回転させて糸を撚る「独楽撚り」をする橋本英宗社長(右)ら=「丸三ハシモト」提供

正倉院(奈良市)の代表的な宝物「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の制作技術の解明などに向け、宮内庁が精巧な模造品を制作した。完成に大きな役割を果たしたのが、和楽器弦の老舗「丸三ハシモト」(滋賀県長浜市)。上皇后美智子さまが皇居内で飼育された蚕の繭の糸から、古来の技法で5種類の太さの弦を仕上げた。橋本英宗社長(45)は「正倉院に残る重要な資料なので、絶対に失敗できないという思いで取り組んだ」と振り返る。

 正倉院の五絃琵琶は中国・唐から伝来したとされ、聖武天皇が愛用した品とされている。模造品は正倉院事務所が2011年から、複数の工芸家に制作を委託。弦を担当した同社は昨年7月、美智子さまが飼育した日本古来の蚕「小石丸」の繭から取れた生糸約1・3キロを受け取った。

 弦の制作には、カシの木製のおもり(独楽(こま))を使って手作業で糸を撚(よ)る「独楽撚り」という古来の技法を用いた。通常は重さ140~200グラムほどの独楽を使うが、琵琶の太い弦を撚るには軽すぎるため、普段は使わない約1・5キロのものや、新調した約700グラムの独楽も使用。太さや撚りの向きに細心の注意を払いながら、糊(のり)引きなどの工程を経て4カ月余りで完成させた。

 1908(明治41)年創業の同社は橋本社長で4代目。橋本社長によると、和楽器弦を制作する会社や個人は現在、国内に7カ所しかなく、うち絹糸を使用しているのは4カ所。独楽撚りの技法を継承するのは同社のみという。橋本社長は「昔からの製法を残してきたからこそ、この仕事を引き受けられた。伝統を守ってきてくれた職人たちに感謝したい」と話した。

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