400年以上の歴史があるとされる宮崎の伝統工芸品「佐土原(さどわら)人形」。作り手が減り、伝統の継承が危ぶまれる中、30代の女性が血縁者以外で初めて老舗人形店の窯元になった。「古地図に載るこの店の歴史と伝統を絶やしてはいけない」と熱意を燃やしている。
江戸時代から約180年続く老舗「ますや」(宮崎市佐土原町)の下西美和さん(39)。昨年10月、7代目窯元に就いた。
ますやは、皇太子時代の昭和天皇から賞状を贈られたこともある伝統店。初代の阪本作左衛門以来、6代目の阪本兼次(かねじ)さん(83)、由美子さん(78)夫妻まで親族で技を受け継ぎ、守ってきた。
佐土原人形は宮崎市と合併する前の旧佐土原町に伝わる伝統工芸品。型取りした粘土を窯で焼き、絵付けに原色ではなく混色を用いることで、仕上がりは素朴な風合いに。一部には「差し手・差し首」と呼ばれる手と頭を後からつなぐ技法を使い、一体一体が異なる味わいを見せる。
だが、技術の継承が難しく、セルロイド製人形にも押され、近年は衰退している。江戸時代に5軒ほどあった人形店は2軒にまで減った。
そんな佐土原人形と下西さんが出会ったのは9年ほど前のこと。元々、ハト笛など郷土玩具の収集家で、玩具工房を訪ねては作り手の思いを聞いていた。米映画「インディ・ジョーンズ」シリーズのファンで考古学にも興味があり、2010年に宮崎県総合博物館で働き始めたのがきっかけだった。