パリッと軽い食感と、香ばしい風味が魅力の「もなか」。
普段はあんこの味に注目しがちですが、実はもなかのおいしさを左右する重要な存在が「皮」です。
群馬県高崎市では、明治時代から受け継がれてきた伝統的な製法で、もなかの皮を作り続けてきた職人がいます。
高崎郷土史会の会員14人が高崎市九蔵町の「美濃屋商店」を訪れ、昔ながらのもなか皮作りを見学しました。
この記事では、もなかの皮がどのように作られるのか、職人が大切にしている「焼き」の技術とともに紹介します。
もなかの皮は「最中種」と呼ばれる
もなかというと「あんこを皮で挟んだ和菓子」を思い浮かべますが、和菓子の世界では、もなかの皮そのものを「最中種(もなかだね)」と呼ぶことがあります。
最中種は主にもち米を原料として作られます。
もなかの皮を専門に製造する店もあり、昔から和菓子作りは、あんや生菓子を作る和菓子店と、最中種を作る専門店との分業によって支えられてきました。
最中皮は工程が複雑なことから、明治時代には専門店による製造が広まっていたとされています。
高崎で明治時代から続く、もなか皮作り
高崎郷土史会が訪れたのは、高崎市九蔵町にある「美濃屋商店」です。
見学が行われた当時、店主を務めていたのは3代目の伊藤隆夫さん。
78歳だった伊藤さんは、もなかの皮作り一筋約60年というベテラン職人でした。
美濃屋商店では、機械だけに頼るのではなく、昔ながらの製法を守りながら一枚一枚の皮を仕上げていました。
もなかの皮ができるまで
昔ながらのもなか皮作りは、もち米から始まります。
基本的な流れは次のようなものです。
- もち米を蒸す
- 蒸したもち米から餅を作る
- 餅を小さく切り分ける
- 餅を専用の金型に挟む
- 火にかけて焼き上げる
美濃屋商店では、小さく切った餅を専用の金型に挟み、職人が火加減を確認しながら手作業で焼き上げていました。
一見するとシンプルな工程ですが、特に難しいのが最後の「焼き」です。
「焼きすぎても、焼かなすぎてもだめ」
もなかの皮をおいしく仕上げるためには、火から取り出すタイミングが重要です。
伊藤さんは当時、
「焼きすぎても焼かなすぎてもだめ」
と話し、皮の状態を見極めながら絶妙なタイミングで金型を火から外していました。
わずかな焼き時間の違いが、皮の色や香ばしさ、食感を左右します。
数字やマニュアルだけでは判断しきれない、長年の経験によって培われた職人技です。
きつね色の皮を作る工夫
美濃屋商店では、餅に水あめを加えることで、もなかの皮を美しいきつね色に仕上げていました。
最中種には白いものもありますが、焼き色の付いた皮には独特の香ばしさと温かみがあります。
材料の配合だけでなく、
- 餅の状態
- 金型の温度
- 火加減
- 焼く時間
- 火から外すタイミング
といった細かな条件を職人が見極めることで、均一な仕上がりが生まれます。
もなかのおいしさを支える「皮」の職人
完成したもなかを見ると、どうしても主役はあんこに見えてしまいます。
しかし、口に入れた瞬間の「パリッ」とした食感や、もち米ならではの香ばしさを生み出しているのは最中の皮です。
あんこの甘さと皮の香ばしさが合わさって、初めてもなかという和菓子が完成します。
普段は表に出ることの少ない最中種の職人ですが、その技術は日本の和菓子文化を支える重要な存在といえるでしょう。
地域の歴史とともに残したい伝統の技
高崎郷土史会による今回の見学は、単に製造工程を見るだけではなく、地域に残る伝統産業や職人の技術を知る機会でもありました。
もち米から餅を作り、金型に挟み、職人の感覚で一枚ずつ焼き上げる。
何十年もの経験によって受け継がれてきた技術には、機械による大量生産だけでは表現できない価値があります。
何気なく食べているもなかも、その皮がどのように作られているのかを知れば、これまでとは少し違った味わい方ができるかもしれません。
高崎で受け継がれてきたもなか皮作りは、地域の食文化と職人文化を伝える貴重な技のひとつです。

