2019年6月6日、ブルガリ ジャパン株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:ウォルター・ボロニーノ、以下「ブルガリ ジャパン」)は、第一回 「BVLGARI MECENATE/ブルガリ メチェナーテ」講演会を開催しました。
第一回「ブルガリ メチェナーテ」のテーマは漆。「ブルガリ メチェナーテ」発起人のひとりである内閣総理大臣夫人 安倍昭恵氏の代表スピーチ、及びブルガリ ジャパン代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノのスピーチに続いて東京藝術大学美術学部長である日比野克彦氏、蒔絵の重要無形文化財保持者である漆芸家の室瀬和美氏、アーティストの舘鼻則孝氏、アート集団チームラボ代表の猪子寿之氏、モデルの森星氏をパネリストとして迎えたトークショーが開催されました。
本講演会においてモデレーターを担った日比野克彦氏のもと、現代社会における漆芸の需要の高まりに繋がることを願いとしたトークショーには、約300人の東京藝術大学在校生が聴講し、約1時間に及ぶトークショーの後には、パネリストと在校生たちによる質問応答の時間も設けられ、感性を刺激する一夜となりました。
本プロジェクトの開催に向けて、発起人のひとりである内閣総理大臣夫人安倍昭恵氏は、以下の賛辞を寄せております。
日本の伝統工芸品は高い技術を持つ匠の手仕事による素晴らしい美術品であり、生活の中で使用される実用品でもあります。匠の手仕事を支えるのは、貴重な原料を生産する生産者と高度な技術をサポートする数々の用具と熟練した技であり、完成するまでには、多くの工程を経て、人々の心を尽くし、細やかな気遣いが施されます。大量生産、大量消費の生活様式が普及し、伝統工芸品の需要が低迷している中で、原材料の枯渇、職人の高齢化、後継者不足などの現状があります。品質の良い物を、手入れをしながら大切に受け継いでゆく心が環境や人を慈しむ豊かな心を育てるものと思います。今回のブルガリ メチェナーテがその一助となればと思います。
第一回ブルガリ メチェナーテのメンターであり、漆芸家そして蒔絵の重要無形文化財保持者である室瀬和美氏は、次のようにコメントを寄せました。
日本の工芸文化は千年を超える歴史を持ち、数多くの芸術作品を生み出してきた。日本の美術は「公」であれ「私」であれ、常に生活空間の中で使用する役割を持ちながら表現されてきた。最も重要な点は日本の工芸文化には「自然」が根底に流れている事である。日本の国土は豊かな自然に恵まれ、四季折々の表情を持っている。その自然を享受しながら養われた感性を基に、土・布・紙・木・竹・金属・玉・貝、さらに漆液という自然からの素材を用い、「技」を通して美を表現してきたのが日本の工芸文化である。さらに素晴らしい事は長い歴史の中で、時代毎に新たな表現を生み出し、それが現在まで途絶える事なく現代に繋がっている事である。今回の場が伝統の価値観を伝えながらも新たな感性を通し、多くの作品が未来に向けて生み出される場となる事を期待している。
東京藝術大学美術学部長であり、第一回ブルガリ メチェナーテ講演会のモデレーターでもある日比野克彦氏は次のように語りました。
世界中の地域にはそこから生まれた物をつくる技がある。気候、地形、植物体系と人は対話をしながら想像する力を学び、物を生み出してきた。私たちは今、地球環境が、社会のネットワークシステムが大きく変化する時代に対面している。未来をあらゆるもの、こと、に対して寄り添い、眼差しを向けるようにする為に、私たちは、先人たちが会得した技に、人が持っている想像する力を注ぎ込み、心に語りかけてくる何かを創り出していきたい。
アーティストであり、第一回ブルガリ メチェナーテ講演会のパネリストとして登壇した舘鼻則孝氏は、次のように語りました。
日本の美術の始まりは、手仕事によってこそ成り立つ工芸の分野にあります。また、工芸の分野に従事する職人たちは、土地に目を向け特産の素材から独自の技法を創出しました。私は、そのような日本独自の美意識や価値観を、東京藝術大学の工芸科で学びました。明治時代には、パリ万博などで世界的に評価をされた日本の美術工芸品も、現代のライフスタイルの中では目にすることもなくなり、地方のお土産品のような扱いとなってしまいました。私は現代における日本の美術工芸分野の再構築をすべく、現代に技を継承している伝統工芸士たちと共に創作活動に励んでいます。日本独自の文化として、その品格を取り戻すべく、今回このようなかたちでブルガリ ジャパンと母校である東京藝術大学との取り組みによって、新たな才能が発掘され、将来の日本に伝統文化とその技が継承されることを望んでいます。
モデルであり、第一回ブルガリ メチェナーテ講演会のパネリストとして登壇した森星氏は、次のように語りました。
美を創造するチームの一員として、モデルの仕事に日々情熱をかけています。今回「ブルガリ・メチェナーテ」に携わる機会をいただき、あらためて日本が誇る工芸文化に深く想いを馳せることができました。私のこれからの仕事のヒントもいただいたような気がしています。現代における美の創造や工芸文化の継承は、人々の夢と情熱、そして芸術と文化の擁護活動を重んじるブルガリのメチェナーテのような想いがあるからこそ、未来へ紡いでいくことができるのだと私は信じています。東京藝術大学在校生の皆さまとの触れ合いもインスパイアリングでした。
どのような作品が出展されるか、今からわくわくしています。
ブルガリ メチェナーテとは:
様々な美術工芸品を誇る日本において、その一部は重要文化財・重要有形民俗文化財に指定され、職人とその好事家たちにより、伝統と継承が守られてきました。現代に生きる私たちは、先人が残した逸品を愛で、その美を求める崇高な人々の想いに痛み入り、雅やかなる時代へ想いをはせて参りました。たとえ時代が移り変わろうと、美を創造するのは偉大なる自然と人々の情熱だといえましょう。ローマで誕生し「宝石の魔術師」と称されるブルガリもまた、美を極めるという使命のもと職人を守り、130年以上に及ぶ歴史を刻む一方で、先見の明を持ち、コンテンポラリーなブランドとしての地位を確立してまいりました。その共通する精神と価値観は、「ブルガリ メチェナーテ」の設立に深く起因しております。
メチェナーテは芸術と文化の援護活動を意味するイタリア語です。その語源はローマ帝政時代の初代皇帝アウグストゥスの腹心であったガイウス・メチェナス/Gaius Cilnius Maecenenasに由来するといわれています。メチェナスは皇帝アウグストゥスの外交・政治面のアドバイザーであり、またアウグストゥス時代に輩出した新世代の詩人・文学者の最大の支援者として広く知られた人物でした。
この素晴らしき古代ローマ史実にインスピレーションを得て、ブルガリは「ブルガリ メチェナーテ」の設立に至りました。「ブルガリ メチェナーテ」は、若者たちに芸術活動のチャンスを提供することにより、日本の伝統的美術・工芸技術技法の継承に役立ち、古き良き技術とコンテンポラリーの融合・出逢いを目的としています。
漆とは:
第一回ブルガリ メチェナーテのテーマは「漆」です。
日本の漆芸は高度な技法が現代に伝えられていますが、多くの行程で継承が難しい局面を迎えています。漆芸とは、漆の木から出る樹液を器の表面に塗ったり模様を描いて作品をつくる技術のことをいいます。漆は固まると水をはじき、くさらない被膜を作るので、昔から生活の道具に用いられてきました。椀や箸、盆や重箱など、漆が塗られた器をすぐに見つけることができます。漆は石器時代から接着剤として使われ、塗料としては9000年前の縄文遺跡から赤い漆が塗られた装飾品が見つかっています。この漆の特徴をいかし、金・銀や貝で美しく装飾し、大切な文書や衣装を入れる箱や、楽器、刀の鞘や鎧などがつくられてきました。漆芸はいろいろな素材と道具と様々な技法によって出来上がります。漆塗りをするためには素材を加工し器物(形)=素地にする必要があります。その素材には木材、麻布等の布、竹、紙、皮革、金属や陶磁器などもあります。漆を箆(へら)や刷毛(はけ)で素地に塗ることを髹漆(きゅうしつ)といいます。素地を堅牢なものにするための下地を施した後、様々な上塗り(仕上げ)をします。漆の塗り肌はそれだけでも深く柔らかな美しさと魅力的な造形があります。
さらに漆の持つ特性を活かし、豊かな表現力を持った加飾技法の一つに蒔絵(まきえ)があります。漆器の表面に漆で文様などを描き、それが硬化しないうちに金や銀の粉を蒔きつけて定着させる技法です。 蒔絵は日本独自に発達した漆芸の代表的な技法で1200年ほど前から行われています。
ブルガリ メチェナーテ スケジュール:
6月6日 「ブルガリ メチェナーテ 講演会」 於 東京藝術大学 上野キャンパス
東京藝術大学美術学部長である日比野克彦氏をモデレーター、蒔絵の重要無形文化財保持者である漆芸家の室瀬和美氏をメンターに、ファッションデザイナーの舘鼻則孝氏、アート集団チームラボ代表の猪子寿之氏、モデルの森星氏をパネリストに迎えて、東京藝術大学在校生に向けたトークショーを開催しました。
8月 某日 アートキャンプ開催 於 東京藝術大学 取手キャンパス
募集にて選出された10名/10組は、東京藝術大学 取手キャンパスにて二泊三日に及ぶ漆に関わる材料や道具の製作を体験するアートキャンプに参加する資格を得られます。工程のうち、重要無形文化財保持者である漆芸家の室瀬和美氏を招いて、漆芸が完成するまでの工程を体験します。
なお、選出された10名/10組には、制作補助費として一人/組あたり10万円が支給されます。
・漆掻き職人から学ぶ漆掻き体験
・生漆から塗り用漆(透漆、呂色漆)の精製体験
・蒔絵道具「粉筒」を材料(葦)収穫から行い、粉筒制作を体験
11月 某日 作品展示 於 ブルガリ 銀座タワー
アートキャンプを経て完成した10作品をブルガリ 銀座タワーに展示します。
10作品のうち、優秀作品に選ばれた3作品の制作者には奨学金20万円が支給されます。
優秀作品のうち最優秀作品には副賞としてイタリア・ローマを訪れて美と伝統を巡る「シークレット ブルガリ ツアー」がブルガリ ジャパンより贈られます。
優秀作品の選考は、東京芸術大学美術学部長 日比野克彦氏、同 美術学部副部長 藤原信幸氏、同工芸科 漆芸(漆工)教授 小椋範彦氏、ブルガリ ジャパン代表取締役社長 ウォルター・ボロニーノが担います。ウォルター・ボロニーノは、次のようにコメントを寄せております。
真の遺産は、世代を超えて受け継がれる本物の伝統、価値観、そしてノウハウの上に築かれます。メチェナーテというプロジェクトを通じて、ブルガリは、職人技と芸術的ノウハウの関連性を支持し、伝統的な職人技に求められる高い品質水準と、ペースの速い現代のライフスタイルとの間にある溝を埋めます。遺産が未来に焦点を合わせた
プラットフォームとして使われるよう、アイデンティティをダイナミックな方法で形作ることが重要です。
夢と創造を胸に抱く若者たちの情熱とともに、日本の伝統工芸の伝統が未来へと紡がれていくことをブルガリは願ってやみません。