300年にわたり受け継がれてきた「張り子」の技をジュエリーに―。郡山市の張り子工房「デコ屋敷本家大黒屋」の21代当主橋本彰一さん(44)と、滋賀県や東京都を拠点に活動する4人組のクリエーターチーム「仕立屋と職人」がタッグを組み、張り子の技法を生かした和紙ジュエリーブランド「harico」を設立した。伝統工芸の魅力を新たな形で発信しようという試みが評価され、国内外で人気を集めている。
張り子は、木型に和紙を張り重ね、だるまなどを作る伝統工芸の技法。橋本さんと「仕立屋と職人」は、この技法をデザインに取り入れ、ピアスとイヤリングを制作した。ジュエリーは色や形違いで12種類。大ぶりだが羽根のように軽いため、動くたびにゆらゆらと揺れて、裏表で異なる色と、和紙の風合いが目を引く。
インターネットで資金を集める「クラウドファンディング」で先月、賛同者へのリターン品としてジュエリーを発表したところ、開始からわずか3日で目標を達成するほどの人気ぶりだという。
生活様式の変化契機
「harico」が生まれた背景には、ライフスタイルが変わってだるまなどを置く習慣や場所が減る中で「普段の生活の中で伝統工芸に触れる機会を増やしたい」という「仕立屋と職人」メンバーの強い思いがあった。メンバーの石井挙之さん(32)、ワタナベユカリさん(31)はアートイベントを通じて橋本さんと出会い、張り子の奥深さや作品の緻密さに引かれるうち、そう思うようになったという。
2人は橋本さんに弟子入りし、約半年間にわたり工房で張り子のことを学んだ。その中で「身に着けるものであれば、日常生活の中で張り子に触れる機会を増やし、張り子の魅力を広く伝えられる」と考えるようになった。そして「置く張り子から、身につけるharicoへ」をコンセプトとしたジュエリーブランドの設立にたどり着いたという。
「張り子の新たな可能性が開けた。張り子を知らない人にも、張り子をうまく伝えられれば」。これまでにも多くのクリエーターとタッグを組み、作品を制作してきた橋本さんも、メンバーの思いが詰まったジュエリーブランドに期待を込める。