夏本番を前に、岡山県郷土伝統的工芸品「撫川うちわ」の制作が、岡山市で大詰めを迎えた。職人の手によって施される風雅な絵柄が涼しげな雰囲気を演出している。
撫川うちわは、江戸時代に三河(現愛知県)から伝わったとされ、松尾芭蕉らの俳句を雲の模様のように並べた「歌つぎ」や、光にかざすとアサガオやホタルなどの絵が浮かび上がる「すかし」の技法が特徴だ。
岡山市北区庭瀬、撫川地区で盛んに作られてきたが、現在、作り手は保存会「三杉堂」のメンバー5人とわずかになった。同市北区の石原文雄(号・中山)さん(81)の工房では、竹の骨組みに絵付けした和紙を貼る「紙貼り」などの作業が続いている。
全て手作業のため生産数は限られ、県内の特産品を扱う「晴れの国おかやま館」(同表町)などで1本1万円前後で販売される。