日本初開催の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が28日、開幕した。会場のインテックス大阪では、各国の政府、報道関係者が集まる機会を捉え、兵庫県関連企業が地球規模の環境問題に対応する工業技術を展示し、特産品など地元の魅力発信に力を入れた。国境を越えた食のもてなしでは、神戸のベンチャー企業が存在感を示した。
今回のG20では、海洋プラスチックごみの削減が議題の一つに。大手化学メーカーのカネカは、会場内のごみ箱用の袋1万枚を提供した。高砂市の工場で生産する生分解性プラスチックが原料。植物油を食べさせた微生物から樹脂を取り出す独自のバイオ技術で、土や海水の中で自然に戻る。
武岡慶樹常務執行役員(60)は会場の企業展示ブースで、生分解性プラの用途をコップやストローなどとともに説明。欧州や日本で食品メーカーなど向けの需要が急速に高まったといい、「廃食用油を回収し、食器にして供給する循環も目指す。G20の機会を捉えて理解を広げる」とした。
川崎重工業は役目を終えた人工衛星などの宇宙ごみを回収する機器の開発状況を展示。担当者が「世界初の実用化を目指す」と来場者らに売り込んだ。
関西の食や伝統工芸など96点を厳選した「魅力発信スペース」には、洋菓子店「ボックサン」のマドレーヌなど神戸スイーツ3品が並んだ。兵庫の産品では伝統工芸の「有馬籠」が出展され、映像で神戸ビーフのおいしさの秘密をPR。神戸市中央区の見学施設「竹中大工道具館」は木造建築の匠の技を紹介した。
宝塚育ちの漫画家・手塚治虫の代表作「鉄腕アトム」を基にした人工知能(AI)ロボットも登場。百人一首の歌を詠み上げ、アニメのテーマ曲を歌うと、米国や中国などの海外メディアが注目した。講談社の担当者は「手塚作品が世界的に愛されていることを実感する」と話す。
レストランではアレルギーや宗教上の理由で口にできない食材が一目で分かるよう、神戸市中央区の新興企業「フードピクト」がデザインした絵文字を表示。牛や豚、小麦、乳製品など14種類。2016年の伊勢志摩サミットでも採用され、現在は空港やホテルなど国内約1500店舗に広がる。
「世界中の人が違いを超えて同じ空間で食事し、交流を深める機会を神戸発の絵文字でサポートしたい」と、考案者の菊池信孝社長(33)。G20開幕までに約250のメニューをチェックし、28日も朝から最終確認して万全を期した。(内田尚典、田中真治、竹本拓也、佐伯竜一)