太宰府市でこまを用いた遊び場づくりに取り組む「国分アンビシャス広場」のメンバーが福岡市東区の勝馬小を訪れ、県伝統工芸品「八女和ごま」で交流を楽しんだ。原材料であるマテバシイの入手が難しくなる中、勝馬地区の住民の協力で伐採できたことから実現した。二つの地域の交流がくるくると回り始めた。
「腰を落とし、低い所から投げるとよく回るよ」。7月29日、国分アンビシャスの小学生8人が声を上げた。厳しい認定試験に合格した「ちびっこ指導員」だ。勝馬小の子どもたちに投げ方やひもの巻き方を丁寧に教えた。
こま遊びの経験がなかった勝馬の子どもたちも1時間ほどでうまくなった。八坂凛さん(8)は「初めてだったけど、回せるようになった」と笑顔を輝かせた。
二つの地域の子どもを結び付けたのは、昔ながらの里山が残る志賀島の自然だった。子どもたちが回す、こまの作り手は独楽(こま)工房隈本木工所(八女市)6代目の隈本知伸さん(60)。最大の悩みは原材料マテバシイの入手。何か良策はないか、アンビシャス広場の創設者である藤田弘毅さん(75)を通じ、里山の自然を守る活動に取り組む「県やまもり会」の田中孝一さん(70)に相談した。
「各地で雑木の里山が消え、間伐もしないため、マテバシイの入手は難しい」。田中さんは専門家の目で航空写真から志賀島に雑木林が多いことに気付き、地元住民の協力で1月にマテバシイの伐採にこぎ着けた。
勝馬のマテバシイは隈本さんに渡り、現在、1年間の乾燥中。隈本さんは近く子どもたちにこまをプレゼントする予定で「テレビゲームの普及でこまの需要はかつての10分の1。子どもたちに遊んでもらい、裾野を広げていきたい」と話す。
この日、こまを通じた交流に尽力した3人が顔をそろえた。2003年から活動に取り組んできた藤田さんは「きちんと子ども同士で遊べている」とほほ笑み、「子どもは子ども社会の中で学び、成長する。学校の勉強だけでなく、生きるために大切なことを身に付けていく」と、これからの交流に期待した。