熟練のガラス「宙吹き」職人ら 現代の名工に 11日に表彰

ガラスに息を吹き込み、器の形を整える上原徳三さん=5日、糸満市福地の琉球ガラス村

厚生労働省は8日、工業技術や伝統工芸、建設など各分野で卓越した技能を持つ150人を2019年度の「現代の名工」に選んだと発表した。県内からは、琉球ガラスの製作・販売を手掛ける琉球ガラス村(糸満市)のガラス吹工、上原徳三さん(66)=那覇市=が選ばれた。表彰式は11日、東京都内のホテルで開かれる。

上原さんは熟練した「宙吹(ちゅうふ)き」の技で、伝統の琉球ガラス作品を製作するほか、国内外の後進育成に努めている。

1967年度創設の「現代の名工」の表彰制度は、技術者の地位や技能水準の向上を図るのが目的。優れた技術を持って産業の発展に貢献したことなどを条件に、都道府県や業界団体が推薦した人から選ぶ。

県では73年度から候補者を推薦しており、2018年度までに55人が表彰されている。

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技磨き50年 ガラスに命 名工選出の上原さん 「まだまだ努力」

現代の名工に選ばれた琉球ガラス村(糸満市)のガラス吹工、上原徳三さん(66)=那覇市前島=の50年に及ぶ職人人生を振り返る。

同市松川に生まれ、おじが働く市内の奥原硝子(がらす)製造所に弁当を届けていた流れで中学卒業後の15歳から一緒に働くように。ガラスに息を吹き込み、器状に整える吹き棹(ざお)を握るまで十数年の下積みが始まった。

材料の廃瓶を色別に分けて割って3年、瓶の口とふたがかみ合うように磨いて4年…。4人の流れ作業で薬瓶を1分に2個、1日に千個作った。練習の暇もない。1グラム単位で品質を保つ先輩の技は見て盗んだ。

本格的に職人を志すのは県内6工房の合併後、一緒に働く琉球ガラス村が1985年にできてから。海洋博ブームを経て製作の軸は日用品から土産の工芸品に移っていた。周りの職人の自由で精緻な造形に刺激された。

41歳で4代目の本社工場長になった後、ベトナム工場設立の準備に。言葉の壁を越え、ガラスの溶融窯3基を造る指揮を執った。設計図はなく、県外の職人が造るのを見て覚えた。「1基失敗すれば数千万円の損失。緊張した」。現地と県内の計3工場の総責任者を20年務め、後進を育てた。

責任者になっても技は磨いた。「琉球ガラスの歴史は百年程度」と他の工芸品にも学ぶ。漆芸の螺鈿(らでん)細工を基に、ガラスに銀箔(ぎんぱく)を巻いて多彩な色を重ねる銀箔螺鈿模様現出法を編み出した。造形は陶器のフォルムをヒントに追究している。

青、水色、緑、赤、黄色の基本5色の代表作「五彩色(ごさいしょく)」シリーズは実直な人柄がにじむ純朴な色合い。今は、職場からの帰路に眺める夕焼けを作品にどう映すかを考える。「自分は器用ではない。まだまだ努力しないと」。柔和な笑みに、底なしの向上心がのぞいた。

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