愛知)伝統工芸品を結婚の思い出に 女子高生が発案

名古屋友禅のウェルカムボードを持つ伊藤工馬さんと明里さん(中央)と、愛知商業高校ユネスコクラブの部員たち

新郎新婦の新たな門出に合わせ、伝統工芸品の制作を体験してもらうビジネスが名古屋で始まった。発案したのは地元の高校生。衰退が心配される伝統工芸の魅力を、幸せな思い出とともに広く知ってもらいたいという。

北名古屋市の伊藤工馬(たくま)さん(33)と明里さん(31)は2月1日に結婚式を挙げる。2人は思い出になるものを作りたいと考え、昨年11月、名古屋友禅のウェルカムボードを伝統工芸士の赤塚順一さん(62)と一緒に1日かけて作った。「職人さんと一緒に本格的なものが作れて、最高の思い出になった」と2人は喜ぶ。

企画したのは、愛知県立愛知商業高校(名古屋市東区)の「ユネスコクラブ」。1~3年の女子生徒13人が地域活性化につながるビジネスを考える部活動だ。県内には名古屋友禅や常滑焼、尾張七宝など国が認める伝統的工芸品が多くあるのに、担い手や生産量が年々減っている問題を何とかできないかと考えた。

部員たちは昨年4月、栄地下街(中区)とアピタ港店(港区)でアンケートを実施。有効回答を得た10~80代の計320人の約7割が愛知の伝統工芸品を持っていないことがわかった。名古屋伝統産業協会や職人にも話を聞き、伝統工芸品のきめ細かな美しさやこだわりを知り、「途絶えさせてはいけない」という思いが強まったという。

部員たちは「どうすれば多くの人に魅力を感じてもらえるか」を考え、幸せな記憶として残りやすく、多くのゲストが集まる結婚式に着目。新郎新婦が職人と一緒に伝統工芸品の制作を体験するビジネスプランを考えた。価格は職人と相談して設定している。

ブライダルフェアで営業活動ができないか結婚式場に依頼を続け、6社目で東区の「百花籠(ひゃっかろう)」が快諾。初参加した昨年6月のフェアでは顧客を獲得できなかったが、2回目の昨年9月に伊藤さん夫妻から申し込みがあった。副部長の宮野夏萌(かほ)さん(3年)は「ようやく顧客を獲得できた喜びと、座学とは違う実際のビジネスの難しさを感じた」と振り返る。

伊藤さん夫妻(左)にはウェルカムボードの他にも、部員たちが作った記念の動画やアルバムも贈られた

ユネスコクラブの部員たちは伊藤さん夫妻に制作体験の様子を収めた動画とアルバムを贈り、結婚式にも立ち会うという。このビジネスは今後も続ける予定で、部長の中西藻音(もね)さん(3年)は「幸せな思い出と伝統工芸品の魅力を届けたい一心で頑張ってきた。後輩たちには、ビジネスのノウハウだけでなく、この『思い』も引き継げたら」と話した。

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