障子などの建具や欄間の格子などによく見られ、くぎを使わず木を組み付ける日本伝統の技術「組子細工」の技術と伝統を守っている黒田裕次さん(44)は、三代続く建具専門店「指勘建具工芸」(菰野町小島)を営みながら「まちかど博物館」として自宅や工場を月に一度公開し、その魅力を発信している。
大学卒業後、一般企業への就職を考えていたが、華やかな絵柄でまねのできない意匠を生み出した父・之男さんの、建具や組子を製作している時の生き生きとした後姿を思い出し、家業を継ぐ決意をした。
父から少しずつ技術を習得し、展示会に出展するなどして評価を受けたことで自信をつけていく一方、身の回りで和風建築が減っていることに危機感を覚え始めた。組子細工を身近に感じ、その魅力を知ってもらおうと、工場見学や体験会、イベントへの出展、SNSでの発信を積極的に重ねてきた結果、2015年のミラノ万博に出展し、16年の伊勢志摩サミットでは組子細工の文箱が贈答品に選ばれた。
「子どもたちが、組子細工や木工の仕事に就きたいと思った時、それができる環境を整えていきたい」と、技術伝承と環境への思いを語る黒田さん。「安価なプラスチック製品はごみとして簡単に捨てられがちだが、木製品は耐久性があり、自然に還ることもできる。木製建具や木製品の需要を増やし、木が育つ山を適切に管理できるよう活性化し、地球環境を整える手伝いがしたい」と語った。