岐阜和傘に新たな息吹 担い手が誕生、伝統次世代へ

岐阜和傘の製作や販売に携わる(左から)前田健吾さん、河口郁美さん、河合幹子さん=岐阜市湊町、長良川てしごと町家CASA

「作る」と「伝える」―。生産量が大きく減った伝統の「岐阜和傘」を次世代へつないでいこうと、新たな担い手が誕生している。作り手と売り手が関係を深めながら、後継者育成、そして産地再生へと取り組み、岐阜の和傘業界は大きく変わろうとしている。

「みんなに手に取ってもらえている」「この濃淡は初めて見た」。4月初旬、岐阜市湊町の和傘専門店「長良川てしごと町家CASA」では、担い手3人が新しいデザインや製作について意見を交わした。「携わる人の協力と意志で、着実に前へと進んでいる」と店長の河口郁美さん(39)=岐阜市=は実感を語る。

岐阜は、昭和20年代には年間1500万本を生産し約600軒の問屋があったが、現在は問屋3軒、職人2人で生産量は年間数千本まで減っている。後継者を育成しようと、和傘職人らが一般社団法人「岐阜和傘協会」を今年1月に設立。職人見習いを公募し、県内外2人が名乗りを上げた。

「(和傘の)存在感や美しさに恋をした。世に広めていけたら」と見習いの一人、長崎県出身の前田健吾さん(37)=岐阜市=は話す。和傘の骨格部分「傘骨」を作る職人の羽根田正則さんから傘骨作りを教わる前田さんは現在、小刀を使って竹を一定の厚みに削る作業などに励む。始めて約2カ月。「想像以上に難しく、生半可な気持ちでは習得できないが、最高の技と心を身に付けたい」と力を込める。

和傘の製作と販売を手掛ける「仐日和(かさびより)」(岐阜市)代表で和傘職人の河合幹子さん(32)=同=は大学卒業後、一般企業に勤めてから、和傘作りの道に入った。和傘職人の祖母を間近に見て幼少期を過ごした。現在は部品の組み立てから完成までを行う。「携わってまだ5年。和傘を手に取って使ってもらえることが何よりの励み」とやりがいを口にする。

担い手が集まり始める中、長良川てしごと町家CASAが2年前にオープンした。常時60本以上を並べ、2018年度は294本、19年度は352本を販売した。桜の花びらの形をした和傘が会員制交流サイト(SNS)で反響を呼んだ。河口さんは「『作る』と『伝える』の二人三脚で、着実に歩みを深められている」と笑みを浮かべる。

「各工程の職人が一つ一つ心を込めて作り上げた、美の集大成であることを知ってほしい」と語る前田さん。「岐阜和傘が火付け役となり、全国の和傘も盛り上がることを願っている」。和紙を通して差し込む優しい光のように、業界を照らす担い手の存在が再び道を切り開いていく。

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