別府の近代建築や職人紹介 「ゲニウスロキ新聞」発行 写真家藤田さん撮影・執筆 [大分県]

「若い世代が古里を考える資料にしてほしい」と話す藤田洋三さん

 別府市の近代建築物やその作り手、エピソードなどを紹介した「ゲニウスロキ新聞」が発行された。長年、別府の歴史を掘り起こしてきた同市朝見の写真家、藤田洋三さん(68)が撮影・収集した写真を主に使い、執筆も担当した。今後も不定期に新聞発行する予定で、藤田さんは「次の世代に市井の物語を引き継いでほしい」と話している。

 藤田さんは高校生のころから現場を歩き、近代建築物やそれを手掛けた職人などを取材。その成果を1994年の別府近代建築史「ゲニウス・ロキ」(別府観光産業経営研究会発刊)にまとめ、昨年続編が出版された。新聞は、2冊で紹介しきれなかった物語や出版を機に寄せられた逸話や写真を元に執筆していくという。

発行されたゲニウスロキ新聞

 「ゲニウス・ロキ」はラテン語で、「土地の精霊」を意味する造語。第1号は石工に焦点を当てた。1935年に別府市の朝見神社の大鳥居を上棟させた友永寅熊は、過激な攘夷(じょうい)論者に襲われた長州藩士井上馨が一時身を隠した旅籠(はたご)の離れ(現在の同市上田の湯町)横の記念碑を手掛けた。さらに潜伏時に井上の世話をした灘亀親分(永井亀吉)の墓石も「寅熊親方の仕事ではないか」と推察している。市内各所で見られる別府石の石垣に関し「鶴見岳の噴火活動で噴出した安山岩がジグソーパズルのようにはめ込まれており、緻密な仕事。まだこうした石垣が作れる職人が健在」と紹介している。

 第1号は3月に発行し、「ゲニウス・ロキ」購入者や知人らに配った。藤田さんは「愛媛にも福岡にも別府を支えた人はたくさんいるが、その物語が伝わっていない。もう一度きちんと見れば、きっと面白いものが見えてくるはずだ」と話している。

 発行は別府市亀川東町の印刷会社「クリエイツ」。希望者には無料で渡し、新聞を置いてもらう場所や配布する人も探している。同社=0977(66)3676。

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