輪島の若手漆器職人と東京の起業家がタッグを組み、輪島塗の技を取り入れたカラフルな漆器の開発に取り組んでいる。業界が需要の減少や後継者不足に苦しむ中、おしゃれと使いやすさを備えた新商品で若い世代を中心に購買欲を高め、伝統工芸の魅力を伝える。カフェやホテル向けに販路を開拓し、海外輸出も計画している。
30~40代の職人3人が制作し、伝統工芸を生かした商品の創出などを手掛けるベンチャー企業の千壽徳蔵(せんじゅとくぞう)(東京)が販売する。社長の濱弘徳さん(43)は、妻美喜さん(37)の母が輪島出身という縁を機に今回の企画に携わった。
124工程を経て作られる輪島塗は、堅牢(けんろう)さと優美さで知られるものの、業界は近年、需要減や後継者不足に悩む。濱さんはこれらの苦境を職人から知らされ、何か協力できないかと考えた。まずは漆器の魅力を知ってもらおうと、気軽に使用できる商品の開発に取り組むことにした。
商品名は「WAJIMA Laca(ラカ)」。Lacaはスペイン語で「漆器」を意味する。皿、コップともに1点6千円程度で来年2月ごろに発売する。素材はケヤキを使用。輪島塗の特徴である地の粉を混ぜた漆による下地塗り、木地の縁や壊れやすい部分に布を貼って強度を高める「布着せ」などを施すものの、一部の工程を省くことで価格を抑える。
インターネットを通じて資金を調達する「クラウドファンディング」で事業への賛同を呼び掛けている。各家庭に眠る輪島塗を木地の状態に戻し、カラフルな色を塗り直すリメークも手がける計画だ。