米沢の伝統工芸・原方刺し子と紅花、新しいコラボを

刺し子工房に作った紅花畑の雑草を抜く遠藤きよ子さん

山形県米沢市の伝統工芸「原方刺し子」に、染色用の「紅花」を採り入れようという取り組みが進んでいる。最上川流域で長年栽培されてきた紅花は今年2月、世界農業遺産への申請が決定。原方刺し子の作家と地元高校生らが伝統同士の新しいコラボを目指す。

原方刺し子作家、遠藤きよ子さん(81)や米沢工業高校専攻科などでつくる「原方刺し子を伝承する会」が、今年度の事業として取り組む。遠藤さんの市内の工房「創匠庵(そうしょうあん)」に紅花畑を作ることから始めた。今後、摘み取った花で染めた糸を使い、作品に仕上げる計画だ。

原方刺し子は主に藍染めした木綿の生地に、糸で幾何学模様の図柄を刺繡(ししゅう)して縫い込む。江戸時代、郊外の「原方」地区で暮らしていた米沢藩士の妻が、着るものもままならない貧しさの中、布を丈夫に長持ちするように刺し子を施したのが始まりという。

美しい文様を施した原方刺し子には、「夫の出世や子どもの健康を願った武士の妻の誇りが表現されている」と遠藤さんは言う。

ただ、遠藤さんによると、原方刺し子で使う木綿の糸は染めるのが難しく、紅花の染料はほとんど使われてこなかったという。

一方、染色用紅花の生産が世界で唯一現存し、世界農業遺産への申請対象となった最上川流域で、昨年度の米沢市内の作付面積は235アールに上り、県内では白鷹町に次いで2番目に多いという。市も紅花を生かした町づくりを進めており、今回のコラボ事業を後押ししている。

遠藤さんの刺し子工房では、これまで花壇にしていた2カ所(計約30平方メートル)を活用。米沢工の生徒らも協力し、5月に紅花畑にした。7月中旬には花を摘み取り、米沢工の生徒らが染料づくりにも協力する。

遠藤さんは染め上がった糸の出来などをみて、原方刺し子のタペストリーを作る予定で、「多くの人たちに参加してもらい、一針、二針縫ってもらおうと思います」と話す。

伝承する会の中心人物で、市文化財保護審議会の白石信也会長は「先人からの伝統文化を受け継ぎ、後世に伝えるのが私たちの使命。原方刺し子と紅花を関連づけて情報発信し、多くの人たちに関心を持って欲しい」と話している。

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