最新のIoT技術が匠の技を守る。
富士山を望む山小屋。
その煙突から立ち上るのは、陶磁器を焼く煙。
そこで脈々と受け継がれていく、伝統の技。
NTT東日本などは3日、登り窯で陶磁器を焼く技法を継承するため、IoTを使った実証実験を公開した。
釜の上には、2台のカメラを設置。
焼き上がりまでのおよそ半月の様子をライブ配信し、タブレットなどで視聴できるという。
窯の温度は、1時間おきに記録。
丸4日、100時間ほどかかるという焼きの工程で、最も大切なのはこの火の管理。
仕切られた窯が階段状に連なる登り窯は、一番下からまきを入れて燃やすことで、炎の余熱を利用するもの。
登り窯の中は温度管理が難しく、これまで職人の「経験」に頼ってきた。
そこで、今回は窯の3カ所に付けたセンサーで、温度のデータをネット上に送信。
データを蓄積し、陶磁器を焼く最適な温度管理ができるようにした。
日本の伝統技法の継承に役立てようという取り組みだが、技法をオープンにすることに抵抗はないのか。
増穂登り窯・太田治孝代表は、「突然切れてしまう。伝統工芸はやっている人がいなくなってしまう。でも、僕が死んだとしてもデータとして残っていれば1つのきっかけはできる。今のIoTというスタイルを使い、古いものも新しく新鮮に見える、そういうものを若い人に伝えたい」と話した。
技術を提供するNTT東日本の唯野和正さんは、「今回は、データの蓄積をメインにやっているが、やはり蓄積は保存だけでなく、今後、活用するような2次利用したり、うまく使っていけるような仕組みを考えて、ビジネスモデル化していきたい。通信企業の頭打ちというか、電話からIoT・ICTの会社へというのは、全体のミッションであるし、まさに第1歩だと考えている」と話した。
これまでにも日本酒の蔵元と提携し、温度管理をデータ化するなど、伝統産業との融合を行ってきたNTT東日本。
ノウハウを活用した日本の技術の継承に、新たなビジネスモデルを模索している。