岐阜和傘、次代を開け 後継者育成、新組織設立へ

後継者を育てるため、共同事業体設立に向けて話し合う和傘職人ら=岐阜市八島町、マルト藤沢商店

岐阜和傘作りの後継者を育成しようと、和傘職人ら6人が協同組合などの共同事業体設立に向けて動き出した。職人の減少や高齢化が背景にあり、12月上旬の発足を視野に入れる。当面は5年間で新たに職人3人を育成することや、10年間で岐阜和傘ブランドを確立させるのが目標。育成資金をクラウドファンディングで募るなどし、持続可能な和傘産業の構築を目指す。

発起人で、和傘製造販売のマルト藤沢商店(岐阜市八島町)の藤澤暁夫代表(55)は「岐阜和傘業界は危機的状況。伝統の技を次世代に伝えるため、業界が一丸となって取り組む必要がある」と語る。業界の現状に危機感を抱き、同業の平野明博さん(71)=岐阜市加納北広江町=、「ろくろ」と呼ばれる和傘の重要部品を国内で唯一作ることができる木工職人の長屋一男さん(69)=羽島郡岐南町=に声を掛けたところ、問屋や職人が一緒になって後継者を育成する組織が必要との認識で一致。斬新なデザインの和傘が評判の田中美紀さん(39)=本巣郡北方町=と河合幹子さん(31)=岐阜市西川手=の女性和傘職人2人も加わり、具体的に動き始めた。

8月にはマルト藤沢商店で設立準備の初会合を開き、人材の募集や育成スケジュール、資金調達法などを話し合った。職人を希望する県外の人から複数の問い合わせが寄せられていることも報告された。県中小企業団体中央会(岐阜市)が組織編成の手順や事業スキームなどを助言。共同事業体の組織形態は、協同組合やNPO法人、財団法人などの中から今後詰める。

設立への動きに、販売者も熱い視線を送る。岐阜市湊町の和傘専門店「和傘CASA」の河口郁美店長(39)は「岐阜和傘の価値に共感する消費者は少なくない」と話す。羽田空港で販売し、8月半ばまでの約1カ月間で10本ほどが売れた。購買客の多くは外国人旅行者で、2万5千~4万3千円の価格帯の商品が人気という。「和傘業界は危機的な状況だが、外国人に好評で若手女性職人が現れるなどうれしい兆しもある。組織の設立でさらに弾みがつけば」と歓迎する。

地域の産業振興や伝統工芸の継承に力を入れる岐阜市も組織化に注目する。初会合にオブザーバーとして出席した同市産業雇用課の村田政信課長(50)は、「市としても設立を支援していく。岐阜和傘が外向きに発信され、販路が拡大し、産業として成り立てば市にとってもありがたい」と期待を寄せた。

マルト藤澤商店の藤澤麗子社長(45)は「自社だけでは後継者を育てられない。業界全体を包括する組織を設立することで、若手職人が安心して働ける環境づくりや経済産業省指定の伝統的工芸品への選定を目指す」と意気込む。

【岐阜和傘】 細かく分業化され、蛇の目傘や日傘など「細物」と呼ばれる繊細な造りの和傘が多いのが特徴。県指定郷土工芸品。江戸時代に岐阜市南部の加納地区を中心に発展し、最盛期の1950年ごろは月産120万~130万本で、600軒以上の問屋があった。洋傘の普及とともに生産は減少の一途をたどり、稼働する問屋は3軒のみになったが、今も和傘の国内生産の約7割を岐阜が占める。「ろくろ」と呼ばれる和傘の開閉に必要な部分を作る職人は国内では岐阜市近郊にしかおらず、後継者不足が深刻な問題となっている。

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