30年前の曲げわっぱ弁当箱修復 職人「今後も末永く」

佐々木さん(中央)から修復の技術を学ぶ小松さん(左)と斎藤さん

秋田県大館市釈迦内の大館工芸社(三ツ倉和雄社長)は埼玉県所沢市の女性から依頼を受け、約30年前に作られた曲げわっぱの弁当箱を修復した。内部を顔料で色付けした弁当箱は、現在用いていない製法で作られていたが、「大事に使ってくれてありがたい」と同社。かつて製造に携わったベテラン職人が若手職人への技術継承を兼ねて作業に当たった。

弁当箱は樹齢200~300年の天然秋田杉製で、内部は赤褐色に塗られている。内部を色塗りした弁当箱は、白木物の人気の高まりなどを背景に需要が少なくなり、同社は25年ほど前に製造を中止した。

女性から依頼があったのは昨年11月。約30年前に勤務先に持参するためデパートで購入したもので、内部の塗りが剥がれてきたため、塗り直しを希望していた。女性からはメールで「今は勤めていないが、自宅で昼ご飯の際に使ったりしている。手作りの弁当箱は温かみがあり、豊かな気持ちになれる」と伝えられた。

同社には曲げわっぱの修復の依頼が年間40件余り寄せられるが、約30年と長年使われた弁当箱の修復は初めて。そこで、内部を塗る製法を知る同社顧問の伝統工芸士、佐々木悌治さん(88)が担当し、今月9日から修復作業を進めた。

今年1月に県みらいの工芸士に認定された入社9年目の小松さつきさん(46)、7年目の斎藤千博さん(25)も作業を手伝い、塗りの技を学んだ。

2人にとって色塗りの弁当箱の修復は初めての仕事。赤褐色の顔料が塗られた部分の補修には、水を付けながら紙やすりで研ぐ「水研ぎ」という技法を用いた。汚れを取り除くため小刀で削り出す作業もあり、小松さんは「貴重な体験」、斎藤さんは「勉強になった」と話した。

仕上げの塗装を行い、乾燥の工程を経て完成した。佐々木さんは「相当使い込んでいることが分かるので職人としてはありがたい。今後も末永く使ってほしい」と話した。

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