仏具とデジタル『融合』…職人不足へ挑む 手仕事補う製造技術

手仕事の内欄間

会津若松市の仏壇・仏具・位牌(いはい)メーカー保志が県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターと連携、手仕事とデジタル製造技術の融合を模索している。伝統産業界の多くは、職人不足による生産力の低下や、後継者不足という難題を抱える。デジタル製造技術で補う挑戦は始まったばかりだが、新時代の製造技術が果たす役割はさらに大きくなりそうだ。

保志は1900(明治33)年創業で、製品製造から販売までを一貫して行う。以前からレーザー加工機などを導入、「デジタル」という言葉も徐々に使い始めていたが、会津若松技術支援センターと連携しデジタル製造技術の確立という研究課題に取り組んだことなどを契機に、さらにデジタル化の模索を加速させた。

現在は位牌を載せる「蓮華座」や仏壇を飾る「内欄間」のデジタル加工に取り組んでおり、蓮華座や内欄間の形状を3Dスキャナーなどでデータ化し、NC加工機や3Dプリンターで再現した。NC加工は数値制御による加工方法で、ドリルなど工具の刃先を座標値で動かし加工する。

同社が葛藤するのは「祈り」の心にデジタル製造技術がどう寄り添えるか。仏壇・仏具・位牌には「命が宿る」「育つ」象徴として木が使われており、手仕事を通じてさらに魂が入るとの考え方があるという。

一方で、家族の形態や生活スタイルは近年大きく変化し、祈りの形も変化している。細部の仕上がりは現段階では手仕事に及ばないが、職人の不足などを考慮すればデジタル製造技術の必要性がさらに増す可能性がある。保志の佐藤誠生産本部長は「多品種少量が求められる時代の中では後継者が経験を積む機会も少なくなりがち。最後の仕上げは職人が手掛けるなどして、どこまで進められるか検証したい」と話す。企画開発部企画デザイングループの木角竜真さんは「まだ人間にしかできない仕事も多い」と認めた上で「手仕事をデジタルデータ化できれば将来的に役立つ部分は多いはず」と話した。

生活様式変化…仏壇は小型化の傾向

居住空間の変化に伴って大型仏壇が行き場を失い、仏壇は徐々に小型化が進む傾向にあるようだ。

仏壇の小型化の背景には、マンション人気や生活スタイルの変化がある。大型仏壇を処分して小型仏壇に買い替えるケースや、仏壇への愛着や先祖とのつながりに対する意識から大型仏壇をリメークして小型化するケースもあり、保志も2008(平成20)年からリメークを手掛けている。

リメークで仏壇の面影を残すためには部材を最大限利用することが必要だが、保志によると、デジタル製造技術を活用すれば部材の形状は変えずに縮尺だけを変えることも理論上は可能という。

伝統産業界の中には他にもデジタル製造技術の活用が有効と考えられるケースがあり、県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターは白河だるまの製造工程に導入する研究も進めている。

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