鳴子漆器

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特徴・産地

鳴子漆器とは?

鳴子漆器(なるこしっき)は、宮城県大崎市の周辺で作られている漆器です。漆器とは、木の器などに、漆を塗り重ねて造る工芸品のことで、全国各地で造られていましたが、温泉郷の鳴子でも独自の発展を遂げました。

鳴子漆器の特徴は、独自の塗装技術です。その中でも代表的なものが、木目を生かした「木地呂(きじろ)塗」と呼ばれる技法です。飴色の透明な漆を用いる木地呂塗で造られた漆器は、使えば使うほど美しい木目が浮かび上がります。また、1951年(昭和26年)に考案された「龍文塗」は、独特の墨流しによるマーブル模様が美しい変わり塗りで、歴史は浅いながらも鳴子漆器の代表格として定着しています。その他、透明な漆を刷り込む「拭き漆塗」や、紅色の光沢が美しい「紅溜(べにため)塗」など、様々な塗り方が存在します。

鳴子漆器は見た目の美しさはもちろん、厚みのある木地に漆を何重にも重ねて塗られているので、長年の使用にも耐えられるほど丈夫です。

歴史

鳴子漆器が始まったとされているのは約350年前、江戸時代の1624年(寛永元年)から1643年(寛永20年)の期間です。

当時の岩出山藩三代城主であった伊達弾正敏親が、塗師の村田卯兵衛と、蒔絵師の菊田三蔵を修行のために京都へ送りました。その後、京漆器の技術を学んだ二人は鳴子へ戻り、ノウハウを生かして漆器造りの発展に貢献し、鳴子漆器が生まれたとされています。

江戸時代後期には庶民の間で温泉湯治ブームが起こり、温泉郷であった鳴子にもたくさんの湯治客が往来するようになったことで、鳴子漆器は安定した市場を獲得していきました。

明治時代に入り、それまでの二人挽きが主流だったろくろが、一人挽き足踏みろくろに変わったことで、製品の種類も豊富になりました。

その後、昭和の時代に入り、鳴子出身の漆工芸研究家・澤口悟一(ごいち)が「龍文塗」を考案するなど、時代と共に鳴子漆器は独自の進化を遂げていき、現在も数人の漆器職人たちが、伝統を守りながらも新たな挑戦を続けています。

制作工程

宮城県観光課

1. 錆付け(さびづけ)

まずは充分に乾燥させた木材を、サイズに合わせて四角に「木取り」を行います。次に大まかな形に「荒挽き」してから再度乾燥させ、その後目的の器の形に合わせて細かく成型します。お椀などの丸い器は「挽物」と呼ばれ、ろくろで木材を回しながら木地挽きを行い、大小様々な形のカンナを使い分けることで、色々な挽物を造ることができます。木地造りは塗師とは別に、その道の専門家である木地師によって行われます。

次に木地を細かく整形・補強し、下地造りに入る前の木地固めを行います。刻苧(こくそ)と呼ばれる生漆などが入った接着剤を、木地の表面にある小さな傷や接合部に塗り込み、乾燥させた後、磨いて形を整えます。木地全体に生漆を塗り、染み込ませた後乾燥させることで強度が上がり、下地が塗りやすくなります。

そして、砥の粉と漆を、水と練り合わせて造られる「錆下地」を木地の表面に塗ることで細かい穴を埋め、表面を平らにすると共に強度が上げる「錆付け」を行います。一通り塗った後1日かけて乾かし、さらに上から重ねて何度も錆付けをしていきます。

2.錆び研(さびとぎ)

充分に錆付けがされ、乾燥させた器を、今度は水を使って研いでいきます。器の表面の細かい突起が削れて平になり、漆が乗りやすいように整える作業が「錆び研」です。その後何度も塗っては乾燥させ、研ぐという工程を繰り返し、漆器の基礎を固めていきます。このような地道な下地造りは、完成品の強度に直結する部分でもあり、目には見えませんが漆器の品質・価格に深く関係しているのです。

3.中塗(なかぬり)

下地が完成した後は、いよいよ漆を塗っていきます。「中塗」と呼ばれる工程では専用の中塗漆が使われ、上塗りに合わせた色が使われます。

4.中研(なかとぎ)

中塗りされた漆は、専用の回転風呂で回転させながら、ムラなく乾燥させます。乾燥させた後、錆び研の工程と同じように表面を研ぎ、平にしていきます。中塗・中研は何度も繰り返し行うことで、漆の美しさや透明感に繋がる工程です。

5.上塗(うわぬり)

最後に行われるのが漆器の美しさを決定する「上塗」です。作業の流れは中塗と同じですが、上塗に使われる漆は純度の高い特に上質のものが使用され、チリやホコリなどが入らないように専用の部屋が使われます。ここでも様々な技法が使われ、表面を磨かないで鏡のような光沢に仕上げる「花塗り」や、蝋色(ろいろ)漆を使用した「蝋色塗り」などがあります。

漆塗りが終わった後、必要に応じて加飾が行われます。無地でも充分美しい鳴子漆器ですが、蒔絵や模様が描かれることにより華やかに彩られ、無地とはまた違った良さが光る逸品になります。

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