石川)九谷焼の新表現追求 三代徳田八十吉たどる企画展

伝統を受け継ぎながら、独自性をどう表現するか。伝統工芸に携わる作家の永遠の課題だろう。今年で没後10年になる三代徳田八十吉は、色のグラデーションで九谷焼に新風を吹き込んだ。その足跡をたどり、三代が収集した作品も紹介する企画展が小松市立錦窯展示館で開かれている。

三代徳田八十吉の「耀彩壺(ようさいつぼ) 恒河(こうが)」。イタリアの現代美術作家の作品に刺激を受けて生まれたという=小松市立博物館提供

三代徳田八十吉(1933~2009)は、祖父にあたる初代から伝授された釉薬(ゆうやく)の調合をもとに、200以上の中間色を開発。緻密(ちみつ)に塗り分けて高温で焼くことで、美しく輝くグラデーションが特徴的な作品を生み出した。花鳥などの文様ではなく、色の変化だけで成り立つ新しい九谷焼は高く評価され、大英博物館など海外でも所蔵されている。

三代徳田八十吉に教えを受けた中田一於さんの「淡青釉裏銀彩花文壺(たんせいゆうりぎんさいかもんつぼ)」=2019年9月20日、石川県小松市大文字町の小松市立錦窯展示館

館内には、三代が影響を受けた言葉を記したパネルがある。若いころ、「九谷焼は好きではない」と言ったら、初代の工房に絵付けに来ていた洋画家から、こう言われたという。

「ここの家には九谷の最高の技術がある。それでなおかつ九谷が嫌いだということは、あなたは新しい九谷を生み出す素質を持っているのだ。その技術を使って、自分の好きな九谷焼を作ってみたらどうだ」。新しい表現を模索した三代の心に残った言葉のようだ。

錦窯展示館は三代徳田八十吉の生家。三代も使った窯が残されている。窯を上部から見たところ=2019年9月20日、石川県小松市大文字町の小松市立錦窯展示館

作り手を応援しようと三代が収集した作品や、三代と関わりの深い作家の作品もある。三代に教えを受けた中田一於さん(70)は、「一人ひとりのよいところを伸ばそうと指導してくれた」と振り返る。40年ほど前、銀箔(ぎんぱく)を貼った上に釉薬を施す「釉裏銀彩(ゆうりぎんさい)」に取り組み始めた中田さんを「これは誰もやってない。一生の財産になるかもしれない」と励ましたという。

新しい九谷焼を追い求める精神が受け継がれていることがわかる企画だ。

案内 小松市大文字町。午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)。一般300円、高校生以下無料。開催中の「九谷の競演 三代と九谷作家たち」は11月24日まで。月曜と、祝日の翌日は休館(月曜が祝日の場合は翌日休館)。展示館(0761・21・2668)。

元記事はこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次