竹籠作り一筋65年の工芸家、藤谷幸也さん(83)=熊本市西区=が初めての個展をくまもと工芸会館(同市南区川尻1丁目)で開催している。昭和と平成の時代に編み上げた作品を展示販売し、さらに会場でも竹籠作りを実演する。「90歳まで現役で」。令和の時代にも技を磨き続ける。
藤谷さんが竹籠作りを始めたのは中学生の時。竹細工の職人だった10歳上の兄を手伝い、内職のみかん籠を編んだ。腕を磨けば、生活の糧になると考え、18歳となった1954年、兄と同じ道を目指した。
客から「これと同じ物を作って」と実物を持ってくれば、形や編み方を研究した。当初は農漁業・家庭用の需要が多かったが、次第にプラスチック製品が席巻。それでも、ひたすら竹と向き合った。還暦を過ぎても作品の幅を広げるため職人の下で学んだ。2015年、藤谷さんが作り出す竹籠は県伝統的工芸品の指定を受けた。
個展会場での実演は来場者を魅了する。弓なりに曲がるほどの竹ひごを自在に編み上げ、籠やランプのかさを完成させる。「何でも作れるのが竹の魅力」と笑う。
熊本地震では自宅と工房が半壊した。今も修繕が続くなかで、創作活動に明け暮れる。新しい時代を迎え「これまで『良くできた』と満足した作品はない。だからまだまだ上達する」と真っすぐな目線で語った。
個展はくまもと工芸会館側の呼び掛けで実現した。4月24日の開幕に合わせ、花籠や野菜籠など約70点を出品したが、既に半数以上が売れている。入場無料。6日まで。