存続が危ぶまれる伝統工芸の復活に向けたアイデアを募る「日本伝統工芸再生コンテスト」を、京都の支援団体が今春初めて開催する。日本文化に関心を持つ海外富裕層らの寄付金を原資に、最優秀賞には事業資金500万円を贈るとともに専門家による特別サポートを提供する。新たな知恵と戦略で伝統工芸をよみがえらせ、匠(たくみ)の技の継承を目指す。
支援を考案したのは、日本の伝統工芸にほれこんだアメリカ人男性
支援団体は一般社団法人「ジャパン・クラフト21」(京都市左京区)。訪日観光客向けのツアー会社を1992年に創業した米国人バイメル・スティーブエンさん(73)=左京区=が、日本の伝統工芸の現状に危機感を抱き、3年前に立ち上げた。
スティーブエンさんは約50年前に初めて来日し、仙台や東京で暮らした。多くの工芸品に触れ、シンプルで機能美にも優れた工芸品を生み出す職人たちの技にほれ込んだ。京都に居を定めた後は日米を行き来して訪日観光客を全国の工房などに案内し、伝統工芸の魅力を伝えてきた。
だが、訪れた先々で目にしたのは、担い手の高齢化や需要低迷で先細りする伝統工芸界の姿だった。「弱い部分の強化と立て直すための戦略が必要だ」。そう痛感し、再生のアイデアや事業案を公募するコンテストを企画した。大富豪ロックフェラーが設立した米非営利団体アジア・ソサエティーのジャパンセンター(東京)とも共催する。
コンテスト開催、最優秀者には事業資金500万円を
日本ファンのツアー客に提案したところ、米実業家の男性から500万円の寄付を受けたため、最も優れたアイデアの提案者に資金援助するほか、マーケティングやデザイン、商品開発などの専門家グループによる1年間の支援サービスを提供することにした。
スティーブエンさんは「日本の伝統的な工芸文化を再生するのか、消えていくのを眺めているのか、選べるのは今しかない。素晴らしい工芸家が残っているうちに、将来の職人やリーダーを育てなければならない」と訴える。
コンテストは、漆工、金工、陶芸、皮革、染織など全ての工芸分野が対象。美術評論家秋元雄史氏や生地デザイナー須藤玲子氏、藍染め作家福本潮子氏らが審査する。1次審査の申し込みは12日まで。出品料千円。6月に受賞者を決定する。同団体のEメール [email protected]