荒尾市樺の屋根施工会社丸宗(まるそう)瓦の瓦ぶき職人、末吉真也さん(36)が神戸市で開かれた「第30回技能グランプリ」(厚生労働省など主催)で金賞を獲得し、優勝した。瓦ぶき競技では九州勢初の快挙。末吉さんは、熊本地震で被災した熊本城大天守の屋根修復でも腕を振るっており、「日本建築の良さを伝えるためにも技術を磨き続けたい」と精力的だ。
技能グランプリは熟練技能士が腕前を競う全国大会で、2年に1度開催されている。今大会は3月1~4日に開催され、表具、建築大工、旋盤など30競技に533人が参加。末吉さんは県瓦工業組合の推薦で初出場し、計13人で争った。
競技は2日間計9時間半で約100枚の瓦を架台(競技用屋根)にふき、出来栄えを競った。高温で焼き上げる和風瓦は一枚一枚反り具合が違う。いかに美しく、いかに頑丈に屋根を覆うかが試され、末吉さんはたがね(金属工具)で瓦の余計な部分をミリ単位で切り取り、隙間なく屋根に納めた。審査員に「バランスに優れる」と評価され、2位以下に大差をつけた。
末吉さんは、同じく職人の父宗文さん(59)を継ぐため、玉名高卒業後、寺社仏閣のふき替えで実績のある京都の徳舛瓦店で2年間修業を積んだ。20歳で荒尾市に戻ってからは一般住宅だけでなく、約30カ所の寺社仏閣で腕を磨いた。2011年には法隆寺大講堂のふき替えに参加した。
高度な技術を要する寺社仏閣での経験は、熊本城大天守の屋根修復でもいかんなく発揮された。県内の職人を束ねる熊本グループのリーダーを務め、奈良、福岡のグループと共に1年がかりでふき直した。「熊本城は地元のシンボル。皆さんから『早く元の姿を見せて』と応援され、やりがいがあった」と話す。
現在は熊本市技術専門学院花園校(同市西区)の指導員として後進育成にも力を注ぐ。建築の洋風化で和風瓦の需要は減っているが「日本建築が見直されるかどうかは職人次第。優れた職人が1人出れば、後進も続いてくれるはず」と業界を引っ張る覚悟だ。