越前箪笥、今風商品を創出 組合理事長の松井氏に聞く

松井建士・越前指物協同組合理事長(越前市の越前箪笥会館で)

福井県越前市の中心部、通称「タンス町」に「越前箪笥(たんす)会館」が昨年10月末、完成し、製品や技術の紹介を始めた。越前箪笥は経済産業大臣指定の伝統的工芸品だが、和だんすの需要が低迷する中、事業者の数も減少している。新設された会館を運営する越前指物協同組合の松井建士理事長(松井産業社長)に業界の現状と会館の活用方法などを聞いた。

――会館建設の狙いは何ですか。

「もともと越前市工芸開放試験場の中に木工機械が設置され、そこで若い人が技術を学んだり、我々が会合をしたりしていた。その試験場が取り壊しになり、新しいシンボルが必要だと思っていた。会館の1階には各社の製品を展示している。今は人を雇う余裕がないため無人だが、将来は人を置いて土産物の販売やもっと積極的な情報発信などもしたい」

「実際に年配の方が同窓会旅行の一環として見学に訪れ、それが契機となって仕事につながったケースもある。シャッター通り化が進む街の活性化にも貢献したいと考えている」

――越前箪笥は需要低迷が続いています。

「正直言って、厳しい時代だ。バブルがはじける前は嫁入りの家具を載せたトラックが何台も連なる光景がよく見られ、この辺も随分にぎやかだった。今、組合に加盟しているのは13社。一番良い時代に比べると業者の数も半分程度になっているのではないか」

「生活スタイルが変化し、和だんすに対するニーズが減っていることが大きい。また、かつては『嫁に出す娘に(嫁入り道具で)恥をかかせたくない』という意識の人がたくさんいたが、今はそんな時代ではない」

――100万円を超す高額製品が多く、手を出しにくい面もあります。

「越前箪笥はパーツをすべて木から切り出して作っており、ベニヤ板などは一切使っていない。木を使えるようにするには15~20年もかけて乾燥させる必要がある。パーツの組み方も特徴的。金具も全部鍛造品で、一つ一つデザインが違い、手作りするしかない」

「手間がかかるため、価格は100万円台のものが主流になる。今は1社当たり年に数本しか売れておらず、利益もほとんど出ないのが現状だ」

――生き残り策は。

「越前箪笥をブランド化し、その上で今のニーズに合った新しい商材を生み出さなければいけない。組合加盟社の中には技術を応用してコースターを作り、ネット直販しているところもある。越前箪笥のキャリーケースを作ったところもある」

「わが社は小物入れを作っている。お寺さんが檀家回りをする時に持って行く『線香入れ』をモチーフにしており、その来歴を話すとお客さんも喜んで買ってくれる。こうしたストーリー性あるモノづくりを進めていきたい。そこから越前箪笥の良さを知ってもらい、需要増につなげたい。実際、プチぜいたくをしたいという若い夫婦や自分へのご褒美を求める中高年層など幅広い世代に良さが伝わりつつあると感じている」

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