大館の伝統工芸士が祭事の吊り桶修理 曲げわっぱ技術生かす

吊り桶の修理に打ち込む佐々木さん

秋田県大館市の伝統工芸品「大館曲げわっぱ」の伝統工芸士、佐々木悌治さん(87)=同市中道=が、潟上市天王、男鹿市船越両地区の国重要無形民俗文化財「東湖八坂神社の統人(とうにん)行事」の祭事に欠かせない「吊(つ)り桶(おけ)」の修理に取り組んでいる。供物を盛る入れ物で、佐々木さんは曲げ物製造で培った職人技を生かし、長く使える丈夫なものを届けたい考えだ。「歴史あるものに関われて光栄」と話す。

統人行事は、両地区の氏子が牛乗り、くも舞い、神社に供えるみそ造りなどを1年かけて行う奇祭として知られる。約千年前に祭事の原形ができたと伝えられ、一連の行事は1986年に国重要無形民俗文化財に指定された。

吊り桶は、7月上旬に神前に供えるみそなど7種の供物を盛る容器で、祭事では8個が使われる。今回、佐々木さんが修理に当たるのは、船越の統人行事保存会(米谷勲会長)が所有する円筒形の4個。いずれも秋田杉とヒバの木で作られ、直径約22センチ、高さ約18センチ。

佐々木さんによると、吊り桶は曲げ物の一種。保存会の物は少なくとも数十年は経ているとみられる。現在多くの曲げ物に使われる接着剤を用いておらず、板を曲げやすくするため内側に傷を付ける昔の技法を用いており、相当古いとみられる。ふたが割れたり、たがの一部が欠けたりしており、金属製のくぎや接着剤で応急処置した跡もある。

保存会が大館市の曲げわっぱ製造販売業の大館工芸社に修理を依頼。同社が「修理には高い技術力が必要」として佐々木さんを紹介した。

作業は、大型連休明けの今月上旬から同社工場の一角で始まった。全体をじっくりと点検し、割れたふたをのり付けしたり、劣化した底板を交換したりといった作業。現在とは作り方が違うため修理には手間がかかるというが、佐々木さんは「昔のものを間近で目にする機会はめったにないので職人として勉強になる」と目を輝かせた。ほかに一連の祭事で使われる小型の桶4個の修理も任されており、いずれも今月中に作業を終える予定。

統人行事保存会の米谷会長(77)は「このままでは吊り桶は数年で使えなくなってしまう。統人行事を長く継承するためにも、出来上がりに期待している」と話した。

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