人吉市の若手鍛冶職人、蓑毛(みのも)勇さん(31)が、新元号の記念に「令和」の銘を刻んだ和包丁を手掛ける。限定100本。蓑毛さんは「新時代とともに、末永く使ってもらえれば」と、令和が始まる5月1日からの製作に意欲を燃やしている。
人吉・球磨地方は林業や農業が主産業だったことから、農機具関連の刃物生産が盛んで、昭和期には市内に50軒ほどの鍛冶屋があったが、機械化の進展で需要が減り、今は数軒ほどに。蓑毛さんが働く蓑毛鍛冶屋は、江戸時代から250年続く老舗で、現在は祖父の裕(ゆたか)さん(84)と父の稔さん(56)の3代で営業を続けている。
10代目となる勇さんは、高校卒業後、稔さんから「外の世界を知れ」と言われ、海上自衛隊に入隊したが、物づくりへの思いを断ち切れず2017年に退職。人吉に戻り、家業に入った。
「祖父や父の技術を学びながら、今も修業の日々」と話す勇さんだが、若者らしく会員制交流サイト(SNS)を活用し、職人技や商品の情報発信に取り組んでおり、インスタグラムでは千人を超えるフォロワーがいるという。
今回の包丁製作は、人吉市が開設した起業・創業支援施設「人吉しごとサポートセンター(Hit-Biz)」に相談したことがきっかけ。SNSで取り組みを紹介したところ、既に20本以上の予約が入っている。
包丁は、1本5千円。使い勝手の良い三徳包丁で、サイズは全長31センチ、刃渡り16・5センチ。希望があれば無料で名前の刻印もでき、包丁の研ぎ方の説明書と無料の研ぎ券1枚もセットになっている。