ろくろを使った木工を始めて30年。京都府福知山市北栄町の木工作家、平石忠さん(75)が、夜久野高原の道の駅農匠の郷内、市やくの木と漆の館で「木工・漆芸展」を開いている。独学で四苦八苦しながらの道のりを経て、伝統工芸展で入選するまでになりつつも「いまだ完成を見ず」と探究を続けるひたむきな人柄が、作品から伝わってくる。10月20日まで。
父が製材所に勤めていたこともあって、もともと木に関心があったところへ、福知山市展で木工作品を見て触発され、会社員時代の1989年から独学でろくろを回し、木目を生かした漆を塗るようになった。
めきめき腕を上げ、94年に市展入賞。99年に木と漆の館が開館すると翌年から通いはじめ、独学では学びきれなかった木工と塗りの技術を習得。2014年には人間国宝らによる日本工芸会が開く第43回日本伝統工芸近畿展に「栃拭漆盛器」を出品し、入選を果たしている。
木工、塗りとも仕上げまで丁寧に行い、作品に独特のつやを生み出す平石さん。蒔絵では繊細な描写を施すなど、多彩な技術を持つ。今回の作品展では盆、器、帯留など38点を展示。「木地をひき、ふき漆を施すまでの工程一つひとつに心を配っているところを見てほしい」と話している。
15日午後1時30分からはギャラリートークを開催。平石さんが技法の説明や、作品への思いなどを語る。木と漆の館は体験施設もあるが、ギャラリーの見学は無料。水曜休館。電話0773(38)9226。