都道府県の伝統×若い感性 地域の技を着る

ファッションの観点からみる47都道府県の個性とは? 東京・渋谷で、日本のものづくりの現在を紹介する展覧会が開かれている。地域に根ざした伝統技術や産業が、現代的なデザインと融合し、新たな一面を見せている。

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渋谷で展覧会

左:展示されている群馬の浴衣や小物 右上段:埼玉の道着の素材や革を藍染めした小物 右下段:広島のビーズを刺繍(ししゅう)したアクセサリー

広島の老舗メーカーによるビーズのアクセサリーや米軍テントを再利用した沖縄のカバン……。渋谷ヒカリエ8階の「d47(ディーヨンナナ)ミュージアム」で開催中の「着る47展」では、各都道府県で作られた製品が展示、一部販売されている。

同ミュージアムは2012年の開館以来、各都道府県を掘り下げる企画や「旅」「発酵」などを切り口に日本を再発見する試みを重ねてきた。

「身につけるもの」に焦点を当てるのは初めて。なぜ今、ファッションなのか。黒江美穂館長(32)は「ファッション=シーズンものというイメージが強いが、サステイナブル(持続可能)な考え方が急速に広がっている。普遍性や、長く愛し、使い続けることの意味を今こそ考えたいと思った」と話す。

印象的なのは、伝統工芸を継承する若い担い手が立ち上げた自社ブランドや、外部のクリエーターとの協業が多いこと。背景には、ここ数年で国の政策や補助制度が充実し、地場産業を支援する動きが活発で、若い世代を中心にしたものづくりが各地で増えたことがある。

「若者と、今まで産業を支えてきた人が互いの感覚を持ち寄って伝統を残そうという機運が高まり、変わるべき点と守るべき点を探っている。各地のものづくりの今を知ってほしい」

現在は32の都府県が紹介され、今後増える予定。3月2日まで。入場無料。

手ごろな浴衣で「桐生製」埼玉の藍染めから革小物

左:「武州中島紺屋」の染め場で、染料をかくはんする新島大吾さん 右:「桐染」の工房で。かご染めにする生地をたぐり寄せる作業を行う平本ゆりさん

制作の現場も訪れた。

青や黄色が涼しげな染めの浴衣は、群馬県桐生市の染色工房「桐染(きりせん)」が生産する。4代目でデザイナーの平本ゆりさん(33)が父の山崎晃さん(66)と、一点ずつ手がけている。指でつまんで寄せた綿の生地を、まだら模様に染める「かご染め」が主な技法だ。

桐生は絹織物の産地で、同工房は約90年にわたり帯の糸や袴(はかま)の染色を手がける。だが、バブル崩壊以降、生産数は減少。綿など手ごろな生地を使ったものづくりを模索していた18年春、平本さんが都内のデザイン事務所を退職して家業を継ぎ、浴衣を作り始めた。「流行に左右されず、長く着てもらえるものを作りたくて。残布も少なく環境にもいい」。生地や染料の調達から縫製までを桐生市内でまかない、「メイド・イン・桐生をもっと広めたい」。

埼玉県からは藍染めの革小物などを紹介。ブランド「ヨシハルワダ」のディレクター和田義治さん(48)が企画開発し、羽生市で江戸時代から続く「武州中島紺屋」5代目の新島大吾さん(43)が染める。「使い込むほどになじんで風合いが変化する。“育てる色”を知るきっかけになれば」と和田さん。新島さんは「気候や藍の状態で色の出方が違う。同じものはない奥深さを味わってほしい」と話す。

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