「ものづくりの技術残したい」箪笥作りの情熱再び 奥州の職人親子、倒産から復活

修理依頼の岩谷堂箪笥を調べる雄さん(左)と孝一さん

奥州市で伝統工芸品「岩谷堂箪笥(たんす)」の製造を手掛ける職人親子が、令和の始まりに心を新たにしている。及川孝一さん(81)、雄さん(57)親子が経営していた製造販売会社は2年前に多額の負債を抱えて倒産。「ものづくりの技術を残したい」と再起を期し、改元された5月1日、再び立ち上がった。

奥州市江刺出身の孝一さんは中学卒業後、東京の家具工場で修行を積んだ。1957年に帰郷し、61年に「藤里木工所」を創業。岩谷堂箪笥作りに打ち込んできた。

ドイツの家具見本市に出展したり、首都圏の百貨店に売り場を開設したりと手広く商売を展開したが、低価格の輸入家具に押されて販売は徐々に低迷。2017年7月に負債約4億円を抱えて破産を申請し、当時の工場も手放した。

その後は、個人的つながりで箪笥とダイニングテーブルの注文を数件受けた程度。雄さんが北上市のコンクリート製品会社に勤めて生計をつないだ。

木工、彫金、漆塗装など技術の粋を集めた岩谷堂箪笥は、国の伝統的工芸品にも指定されている。ともに伝統工芸士の資格を持つ及川さん親子の情熱は衰えなかった。

奥州市の知人宅を借りて5月1日、新たな箪笥の製造や古い箪笥の修理を本格的に再開。雄さんは「破産して多くの人に迷惑を掛けた。何とか復活し、技術を伝えていくことがおわびになる。お客さま一人一人と心が通い合う仕事をしたい」と語る。

今後はテーブルなども製作し、小物づくりの体験教室を開きたいという。孝一さんは「世界に通用する新しいものを作りたい」と張り切っている。

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