西陣織を支える糸準備などの関連工程で、職人の高齢化が深刻化している。西陣織工業組合がまとめた2018年の関連工業調査で、80代の事業主が2割近くを占め、事業所の半分以上が「自分の代で転廃業」と回答した。同組合は技術の継承が喫緊の課題として、各工程の技法や道具などを詳細に記した冊子の製作に取りかかる。
経(たて)糸を機械に通す「綜絖(そうこう)」という準備工程を担う西陣織綜絖組合は、1980年に76軒あった組合員が、現在は10軒に減少した。最若手は60代。綜絖は、新しい織物を作る際に必要な仕事で、作業に要する時間は3~4日。数千本にもなる経糸を操り、織組織を決める工程は、高度の熟練が必要だ。倉辻彦一組合長(81)は「一人前になるには10~15年かかる」という。
西陣織は、中心となる製織を支える多くの関連工程があり、分業体制がとられてきた。西工が関連工程8組合を対象に調べた西陣関連工業調査報告書によると、調査対象企業はこの15年間で半減。18年の調査では、事業主の年齢は80代が増え、2割近くと超高齢化が進む。前回調査(15年)と同様、70代以上が半数を超え、60代以上は4分の3を上回る。
今後の事業計画は「自分の代で転廃業」が計52.3%。理由は「将来、仕事量が大きく減りそう」「後継者がいない」がそれぞれ34.5%だった。機器類や部品、原材料などの入手は「困っている」「将来心配」が半数近く。年間の事業収入は300万未満の事業所が31.5%で、将来にわたり安定して事業を継続するのが困難な状況が浮かび上がった。
一方、西陣の織物会社を対象にした西陣機業調査(同)によると、関連工程の廃業に伴い、綜絖や、経糸をそろえる整経(せいけい)では2割前後が「外注先の確保が難しい」と回答した。
西工は調査を受け、本年度、各関連工程の技術や、手に入りにくくなっている道具を調査し、冊子にまとめることを決めた。技術や道具の継承、後継者育成の手立てを検討する。
18年の西陣織産地の総出荷額は、307億円7100万円と、前回調査からは7.8%減少していた。ピーク時の1990年比で11%程度の水準に落ち込み、関連工業にも影響を与えている。辻本泰弘専務理事は「関連工程の一つでも欠ければ、西陣織は織れなくなってしまう」と危機感を募らせる。
関連工業調査は関連工程8組合197事業所に実施し、115社(回答率58.4%)が答えた。機業調査は京都府、京都市、西工が実施。18年対象の第22次調査は298社に行い、287社(回答率96.3%)が回答した。