タコやメジロをモチーフ 「下浦土玩具」全国区へ 素焼きの素朴さに脚光 熊本県天草市

下浦土玩具を製作する「しもうら弁天会」のメンバー=天草市

 天草の伝統工芸「天草土[どろ]人形」をモチーフにした新作品「下浦土玩具」が、脚光を浴びている。無印良品(東京)の福袋「福缶」に昨年採用されたことをきっかけに、全国から注文が相次いでいるという。一度は途絶えた伝統の工芸品が、全国区の舞台で素朴な魅力を発信している。

10月上旬、熊本県天草市下浦町の地域おこし団体「しもうら弁天会」(近藤康彦会長)工房。メンバーらが手のひらサイズの玩具を丁寧に紙やすりで磨いていく。週2回、参加する松岡初美さん(67)は「近所の人と話しながら作るのは楽しい」と笑顔で話した。

 天草土人形保存会の前田宗儀会長(80)によると、土人形は江戸時代中期に唐津藩出身の瓦のふき替え職人、廣田和平が瓦の材料で仏像を作ったのが始まりとされる。素焼きで質素な作りが特徴。昭和初期まで子どもの健やかな成長を願う節句飾りの一つだった。その後、一度は途絶えたが、2002年に保存会が発足した。

素焼きした下浦土玩具を紙やすりで磨く、しもうら弁天会のメンバー=天草市

 転機は17年。同市下浦町出身で武蔵野美大(東京)の若杉浩一教授が「伝統を守ることで天草の文化に誇りを持ってもらい、地域のコミュニティーづくりや喜び創出につなげたい」という思いから弁天会に相談した。

 若杉教授の知人でデザイナーの下妻賢司さん(38)=東京都=が土人形をもとに新しいデザインの土玩具を考案。タコがモチーフの「ひっぱりだこ」(約9センチ)、メジロ3匹が寄り添う「めじろおし」(約4・5センチ)、地元で祭られている「弁天さま」(約10センチ)の3種類がある。

 現在は平日の午前、メンバー10人が交代で作業を続けている。石こうの型に水を混ぜた粘土を流し込む作業を3回繰り返した後、2~3日乾燥。800度の電気釜で2日間焼き上げ、色付けする。

 無印良品の「福缶」には全国の縁起物が集められている。採用された「下浦土玩具」は昨年、地元の石工が製作した千個を納入。東京や福岡の雑貨店でも扱うようになった。

 今年5月から、保存会の指導を受けて弁天会も製作に参加。来年の福缶用に、ひっぱりだこ千個の製作を急ピッチで進めている。

 土玩具作りは、地域のお年寄りの生きがいづくりにも一役買っている。同会の宗像桂子副会長(65)は「“爺婆[じいばあ]産業”として地元住民のつながりを維持し、昔ながらの伝統を新しい文化として発信したい」と話している。

 弁天会のフェイスブックを通しても販売している。ひっぱりだこ、弁天さま各2500円。めじろおし2千円。

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